クルー奮闘記 まこと ~ゴールへ~
さあ大島~茅ヶ崎泳断チャレンジのスタート。
スタートをミネさんがシーバーで各船へ連絡することになっていた。
だがスタートの連絡が遅い!
もうスタートしちゃってるよ!!
それに入り江の入口に止まっちゃって邪魔だし(笑)
「ミネさんどいて~!!!」の声に漕ぎ始めるミネさん。
いきなりカヌーぶつかりそうだった。
そういえばこのスタート前もトイレにいっていなかったな~。
相変わらずのマイペースぶりだ(笑)
ちょっとゴタゴタしたが、順調にスタートをきった。
最初の10kmぐらいは、時速4kmでいいペース。
朝から風が強かったが、南西だったので若干押してくれている様にも見えた。
OC2に乗っていた私は、前にカメラマンさんを乗せて漕いでいた。
OC2の一人漕ぎ。
これが結構きつかった。
シャークシールドが抵抗になり、そしてカメラを水の中に入れて撮影してる。
全然進まない!!(汗)
カメラマンさんにお願いをする。
「3時間乗ってられるときついので、途中で降りてもらっていいですか?」
「食事をとっているところを撮りたいのでそこまでお願いします」
1時間・・・・・・頑張ろう。
これがあったので、その後はなるべく2人で漕ぐように体制を少し変えた。
風があったのでOC1を途中で上げてしまったのもある。
カヌーに付けていたGPSで8kmぐらいのところで無線連絡が入る。
「直線距離で4km」
えっ!?まだ?
あらかじめ東に流される事を想定して西に進路を取っていたから仕方ないが、それにしても進んでいない。
でもかずやさんに言うのはやめようと思った(笑)
そして最初の交代の時間になった。
あつし・タマのペアと交代。
腹も減った事だし、ご飯を食べましょうとミネさんと話をしていた。
船に上がろうと後部の梯子に近づくが、廃棄ガスが臭い。
もろに吸ってしまった。そして船に上がるが揺れが酷い。
うっっ。船酔いだ!(涙)
乗ってすぐにやられてしまった私。
気持ち悪くてご飯が食べられない。
まだ3時間しか経ってないのに先が思いやられる・・・
意外な敵に遭遇してしまった(笑)
交代後30分が経過し、最初のシャークシールドの電池交換の時がきた。
その30分前に試みたのだが電池を濡らしてはいけなく、結構波もあったため上手く交換ができなかった。
そこでかずやさんの指示もあり、マリブをアマの下に入れて固定してから交換する方法をとった。
電池は3つしかない。
交換した電池はすみやかに充電をして次回にまた使用しなければならない。
電気をもって帰ってきた景山が充電しようとするが、充電器が無い。
一瞬「宿舎に忘れてきたのでは」と不安になる。
私は船酔いで動けない。
景山が無線でもう一艇の船とやり取りをしている。
だが向こうの船には無い。
もう一度こっちの船を探している。
だけど私は動けない・・・
すまん。手伝えなくて。
すると「あった」という声が聞こえた!
よかった。
すぐに無線で向こうの船に報告する。
「ちょっと落ち着け!!いまさら慌ててもしょうがないだろう!」とまささんに言われる。
確かにそうだ。
もう戻れないのだから、冷静に対処しよう。
そしてまた3時間後、次の交代の時もまだ気持ち悪い。
最初はカメラマンさんが撮影をしたいとの事だったので、みねさんにOC2を漕いでもらった。
私は、「海に出た方がよくなるよ」と言われ、初体験のマリブで併走を試みた。
これが結構難しい。
最初はついていけたのだが、まだうねりがありバランスが上手くとれなかった。
だんだんと遅れていく・・・
そして船に向かった助けを求めた。手で×を出して景山にヘルプを(笑)
危うく遭難するところだった。何とも情けない。
その後、カメラマンさんの撮影も終わったのでみねさんとOC2で併走。
次に交代するときには船酔いもすっかり良くなっていた。
このころになると風も弱くなり、波も無くなって来た。
コンディションもよくなってきた。
10時間が経過し、だいたい直線距離で29km半分の位置まできた。
予定通りのペース。
このままいくと予定通り1時には茅ヶ崎に到着できる。
そんなやりとりを無線で行っていた。
途中マッスルとヒデマサが一緒に泳いでいた。
なんでもマッスルが一緒に泳ぎだしたら、ペースが遅くなったとか(笑)
私と景山とあつしは、30分だけ一緒に泳いだ。
かずやさんはシャークシールドで痛みがビリビリくると言っていたけれど、
事前に近づいた時は全然感じなかったので大丈夫だと思っていた。
しかし、結構ビリビリくる。
電気風呂とまではいかないが気持ち良いものでもなかった。
こんな中をずっと泳いでいるかずやさんも大変だと感じた。
そして17時を過ぎこれから暗くなってくる。
OC1を出して、2艇で併走をする。
少し経ったぐらいだろうか。
船のクルーが「サメだー!!!」と叫んでいる。
よく見ると北東の方から背びれを出したサメがこちらに近づいてくる。
「あげろー!!」と声が飛ぶ。
OC2の前に乗っていたタマがかずやさんを止めようと必死になっている。
でもカヌーの上からパドルでかずやさんを止めようとしているだけで、
守っているようにも見えなかった。
結局、サメは前を横切っただけで、こちらに来る事は無かった。
シャークシールドの効果が実証出来たのか、何事も無くて良かった。
それにしてもタマだけはテンパッてたな(笑)
だんだん暗くなってきた。
頭にフラッシュライトを付け、それを頼りに併走をしていく。
月の明かりもあり、そんなに暗いという感じではなかった。
しばらくすると江ノ島の灯台が見えてきた。
ここまできたら、残すと事あと15kmぐらい。
1時には到着できるペースで順調に泳いでいる。
風もなく波もなく最高の状態。
しかし予報では北東の風が吹くと言っていた。
その前にいけるところまで行ってしまいたい。
だんだん風が出てきた。
北東の風だ。
無事着くだろうか・・・
予報どおり、風が強くなってきた。
もう交代している余裕もない。
というか休憩でとまっていると押戻される。
進みつづけるしかない。
なんとか遅いなりにも少しづつ進んでいる。
でもかずやさんの様子がおかしい。
カヌーにぶつかりっぱなしで全然泳げていない。
あと5km。
まささんとの約束が頭をよぎった。
「限界・危険だと判断したらやめること」
もう浜の明かりも見えるのにここで終わりたくない!止めたくない!!
そんな事を考えながら進み続けていく。
無線でまささんに相談するか、どうするか真剣に悩んだ。
もう一回やるのも嫌だなと思いながら。
ドリンクも切れてきたので、OC1に乗っているタマが船に取りに行く。
帰ってきたと思ったら、
「流しちゃいました!」
「取りにいけよ!!」
パドルで一生懸命取ろうとするタマ。
「飛び込めよ!!」
でも飛び込まない。
結局、命のドリンクを流してしまった。
もう笑い事では済まされない。
これ以上は止まってられないので泳ぎだす。
ゴールできるのだろうか?更なる不安に襲われた。
「ミネさん、押戻されていますよね。進んでいないけどかすやさんには言わないでおきましょう」
そんなやり取りをみねさんとしながらかずやさんを、
「もう少しだ、頑張れ!」
と励まし続ける。
そしてついに止まってしまった。
「少し集中したい。流されないように頼む」
そう言われ静かに待った。
叫ぶかずやさん。
辛さをひしひしと感じた。
5分くらい止まっていただろうか、泳ぎだした。
もう浜に向かって泳ぐだけ。
あと3km。
力強い泳ぎが戻った。
これなら行ける!
「かずやさんにカヌーが当らないように気持ちよく泳がせてあげましょう!」
そうミネさんと話し、多少離れても方向だけ間違わないように併走を続けた。
そして残り1km。
全員でゴールしようと話しをしていたので、あつしと景山がマリブの2ケツで合流してきた。
まだ早くないか?風も強くなっているし、大丈夫なのか?
でもあまり心配もしてられないのでかずやさんの方に集中する。
だがふと後を見ると二人がいない。
やっぱりついて来れずに船にあがったのだろう。
そう思っていた。
(後から聞いたら遭難しそうになっていたとか・・・)
ついに茅ヶ崎漁港の入口に差し掛かった。
後からマリブに乗ったあつしが合流してきた。
景山は見当たらなかった。
するとまささんが乗る船から声が聞こえる。
「もう景山は行かせないから、お前らだけで行け!」と。
状況が良く分からなかった。
だがその直後、
「景山を行かせるから、もうはぐれるんじゃない」と。
なんとなく状況を理解した。
漁港に入り、、目の前にはサザンビーチで待つ人達の明かりが見えてきた。
堤防から「頑張れ!!後少しだ!!」と声援が聞こえる。
サザンビーチのブイに差し掛かった。
網にラダ-が引っかかり、降りてカヌーを通す。
もたもたしているうちに、パドルを流してしまった。
たまがパドルを見つけてくれたが、またブイの向こう側にパドルが流されてしまった。
取りにいってくれたが、もうかずやさんは先に行ってしまった。
そして大歓声のもとかずやさんがゴールした!!
みんなでゴールしようと言ってくれていたのに、申し訳なかった。
絵的には良かったんだろうが。
私達クルーは横からみんなで上がった。
でもそこにも応援しにきてくれたカヌークラブのメンバーが駆け寄ってくれた。
本当にうれしかった!
しかしインタビューが始まってしまったので、かずやさんに近づけず・・・
しばらくして歩き出したので、かずやさんのところへ。
するとかずやさんも気付いてくれ、ガッチリ握手を交わし抱きあった。
実は誰にも気付かれていないと思いますが、涙が少し・・・
この挑戦、私達サポートクルーも本当に最後まで大変だったと思う。
本来であれば私達は裏方であり表に出て行ってはいけないと思うが、
かずやさんは取材等ある毎に、私達の事を表に立たせてくれた。
本当に理解してくれていた。
だからこそ(先輩後輩ではあるが)仲間として、良き理解者として
ひとつとなって達成できたと改めて感じる。
応援してくださった皆さんもそう。
こんなにすばらしい仲間と巡り会えた事、本当に誇りに思う。
ただ今後が少し心配だ(笑)
来年は私が大島から泳ぐ事になるのだろうか。。。?
~最後に(後書き)~
遅い時間にゴールの瞬間まで応援しにきてくださった皆様、本当にありがとうございました。
サポートをしてくださったスポンサーの方々、船長さんにも本当に感謝しています。
そしてこんな素晴らしい体験をさせてくれたかずやさんに感謝したいです。
今はゆっくり体を休めてくださいね。
完