50km奮闘記 最終 | Going my way ~大島→江ノ島泳断チャレンジ~

50km奮闘記 最終

日本人初 大島→茅ヶ崎(60Km)泳断プロジェクト

約5Km付近を折り返し、ようやく茅ヶ崎に戻る。
実はその日、サザンビーチで花火大会が行われる予定だったから
7時までにはサザンビーチ沖を抜けたかった。
花火準備をしている方々に迷惑をおかけしない為だ。


少しずつ近付くサザンビーチと、落ちていく太陽。
そして進んでいく時計が頭の中を支配した。
「やべー、急がねば」
瞑想状態どころではない。こりゃ、急がねば。
祭に穴を開けるわけにはいかない。


そうこうしている間に、遠くから監視艇っぽいクルーザーが接近してきた。
「やべー、茅ヶ崎×オーシャンスイムで悪いイメージ残したくない。まいったな~」
と考えていた。
船は一度、遠くで停まったものの、やはり近くまで接近してきた。
カヌーは誠とタマ。
やはり、俺が話すしかないな~っと思い、ゴーグルを外す。

すると。。

「おー!鈴木かー!練習か?頑張れよ!」

っと、船に乗っていたのは湘南レスキュー隊長で、今回チャレンジの搬送船にも
乗り込んでくれる三橋さんだった。

「もっと沖に出た方が(花火から離れた方が)いいですよね?」と聞くと
「いや、こんなもんでいいよ!」
と言ってくれた。
「ありがとうございます!」と言うと、みんな手を振って帰って行った。
超、一安心。よかった!


Tバー戻るとほぼほぼ40kmになっていた。
やっと、前回のラインまで来た。
やっと、限界を拡げられる。

ここで、あつし&ミネさんが合流する。
次の10Kmはギアチェンジ&スピードUPと決めていた。
刺激物を取り、最後の固形食を食べる。

「じゃ、いこーや!」と皆でスタートを切る。

少しずつ太陽は沈むが、結構気にならないものだ。
星がけっこう綺麗で悪くない。
沖からTバーを見ると、かなり人がいるのが分かる。
しばらくすると後の方で花火が上がっていた。
そういえば、今日ミネさんは友人の看護婦さんと花火を見る約束をしていたんだ。
本当に申し訳ないな。。。とミネさんに感謝する。


次の休憩の際、「ミネさん、今日看護婦さんでしたね。すいませんでした。」と謝る。
ミネさんは「いーよ!今日は練習しよう!」と笑顔で言ってくれた。
あー、本当に心の広い人だと、感謝する。

しかし、次の瞬間。。。。。
「やべー、おしっこする」と言って、俺の目の前でおしっこをしようとしている。
ちょっとは離れているとは言え、水の中でこちらに流れてきそうな勢いだ。


前言撤回!


「やっぱ、この人最低だ。」
それ以降、ミネさんの隣を泳ぐのは止めた。
ミネさんは気持ち良さそうに夜空を見上げていた。


夜の海では色んな生物が登場する。
前回に続き、今回も夜光虫登場。
慣れてくると、感動も少ない。笑

あと、何だか分らないだが、プニュプニュした物体がずっと手に触れる。
刺してきたりはしない。
最初は小魚かとおもったが、たまに掴んで見ると、魚の形はしていない。
たぶんだが、、、あれはクラゲの赤ちゃんだったかもしれない。
茅ヶ崎~辻堂の間。
ずーーーーーーーーっといた。
でも、もしあれがクラゲの赤ちゃんで、大量異常発生しているのだとしたら。。
ちょっと、ぞっとする。


最後の10kmは茅ヶ崎→辻堂を2往復にした。
一度、Tバーに戻ってきたとき、遠くから「頑張れよー!」という声が聞こえる。
暗闇からだから、耳を疑う。
すると「かずやー、頑張れ!」とまた聞こえた。
花火を見にきていたCOCC&PBCのメンバーが応援してくれているのだ。

これは嬉しかった。
実は40kmぐらいから足の付け根が痛く、しんどかった。
もう舌の感覚はなく、味覚も麻痺しかけていた。
三半規管も狂って来ており、星を見ても、常に流れ星状態だった。
体力的には問題ないのだが、様々な痛みと戦っていたから、嬉しかった。

最後の元気をもらい、笑顔になる。
「さー、行こうや!」とラスト1往復を目指す。

日本人初 大島→茅ヶ崎(60Km)泳断プロジェクト

思えば、朝8時にスタートし、その時は10時前。
長かったのかな~、短かったのかな~っと振り返る。

今回のチャレンジを決意したとき、色々な方から「本当に出来るのか?」と聞かれた。そりゃ当然だと思う。
超長距離の実績が俺にはなかったから。
でも、そう言われるのは嫌だった。
また、直接聞きはしなかったが、きっと「あいつは分かっていない」と言う声も
出ているんだろうな~っと想像していた。海の世界は狭いから。


関係者なら分ると思うが、海の世界は「認めてもらう」しかない。

それは宣言でもなく、成果でしか語れない。
理屈でも、論理でもない。


だから、今回の50kmには意味があった。

トライアスリートや、長距離マラソンをやっている方に以前練習法を聞いた。
そしたら、本番の距離の半分ぐらいまでしか練習ではやらないそうだ。
だいたい、半分できれば本番でも完走出来るらしい。


でも、俺はこのチャレンジ企画時50kmを達成できたら、本番もチャレンジすると決めていた。
安全管理もあるが、するべくしてスタートラインに立ちたかったからだ。
無謀な冒険でなく、正面からチャレンジとしたかった。

それは、自分自身に対してもそうだし、
まわりの人間に対してもそうだ。


これはイカロスの羽では無い。



長い時間を経て、ゴールした瞬間は吠えた。
やっとスタートラインに立てた事が嬉しかった。
俺はやっと挑戦が出来る!
やっと「チャレンジします!」と胸がはれる!!

いつも思うんだが、久々に足を使っての2足歩行は落ち着く。
どしーっと感じる重力も心地よい。
仲間との会話、笑顔、握手。
どれも最高だ!

ゴールには誰もいないけれど、いつも達成の瞬間は充実感に満ち溢れる。
自分に満足できるのが嬉しい。



長くなってしまったが、50km奮闘記はこれで終了。

やっと、スタートラインに立てた訳だが
達成への可能性はまだ10%ぐらい。

自然相手のチャレンジってのはきっとそんなもの。
人は無力に等しい。


ある尊敬する先輩に言われ、ずっと引っかかっていた一言がある。
「達成できたらラッキーだよ」。
当時はナニクソっと思ったが、それは自分がスタートラインに立ててなかった、
いや、早く立ちたいと思っていたから、感じてしまったのだと思う。


今ならそう思う。
達成したら「ラッキー」である。


でも、運を引き寄せるのも、その人間の力。
結果論でしか語れないことなんだが、日々の行い、姿勢、全ての積み重ねが
運を呼ぶものだと信じたい。


空と海はいつも人を見ている。


自然に感謝し、仲間に感謝し、自分を信じ、くるべくしてその日を迎えたい。

何があっても笑顔で!


Never Say Never!!!
日本人初 大島→茅ヶ崎(60Km)泳断プロジェクト

日本人初 大島→茅ヶ崎(60Km)泳断プロジェクト


50kmスイム、達成ではなく、完成!!!