50km奮闘記② | Going my way ~大島→江ノ島泳断チャレンジ~

50km奮闘記②

相模川河口に近付くと、水質が変わってくる。
はっきり言って、まずい。
海水が美味しいわけではないが、少し生臭さを感じる真水感が
辛く、水の中では口を閉じるようになる。

「これ飲んだら腹壊すかな~。。」何て考える。


しばらくすると今度はダースベーダーが見えてくる。
ダースベーダーってのは平塚沖にある、黄色の鉄塔?である。
インベーダーに似てるから最初はインベーダーと呼んでいたのだが
いつしかダースベーダーに変わっていた。
多分、その方が強そうだからだろう。
いつもはカヌーで見るダースベーダーだが、水面から見る
それもなかなか圧巻だった。



そしていつもと変わらず、また泳いでいた訳だが
少しずつ、体に異変が起き始める。
どことなく、力が入らない。
全身がだるい気がしてくる。
「これはおかしい」と一旦ストップする。
タイムを聞くと、かなり早いスピードは出ている。
何故だろう?と考えながら水を飲むと、ん?美味い!
その時気付いた。
何とあまりの暑さにいつもより水分不足になっていたのだ。
いつもは40分置きの水分補給で良かった。
しかし、水温が高くなっていること、日差しが強い事が原因で
相当汗をかいていた様だ。

ちなみに、後で気付いたのだが、その14時間の間で水は6リットル近く飲んでいた。
しかし、全て汗で流れてしまった為、尿意は一切なかった。
これって恐ろしい。
かなり過酷な状況なんだと再確認。
30分置きの水分補給に変更する。



花水河口あたりを過ぎると、ペースが上がってくるのが分かった。
タイムは、やはり早い。
「過去のトレーニングで俺も早くなったか?」何て自画自賛しながら(苦笑)
「このペースでいけたら本番も14時間ぐらいで出来るかも」一人夢を膨らませていた。

快調に飛ばし続け、大磯プリンスホテルが見えてくる。
今年の冬にカヌーの練習で来た以来、久々の景色。
懐かしい。
水分を取りながら、オニギリを食べる。
やっぱ、梅オニギリはうまい!
搬送のクルーもカヌーからマリブボードにローテーションで変わったりと色々試しているようだ。
そんな姿を見ているとこっちが楽しくなってくる。
何か嬉しい。



オニギリを食べおえ、次は茅ヶ崎を目指しスタートする。
さっきまで調子が良かったから、気持ちも軽い。
しかし、何かあまり進んでいない気がしてならない。
うーん、感覚的におかしい。

実は往路の調子良さが大きな過ちだった。
見た目のウネリは横から受けているのだが
水の中の動きは茅ヶ崎から大磯側に流れていたのだ。

そこから先は長かった。
往路の倍近く時間を要したのではないだろうか?
右からはウネリを受け、流れに逆らい、肉体的にも精神的にもつらい時間となった。


こうなると覚醒状態まで意識レベルを引き上げ、ピッチを上げる必要がある。
頭の中では「まだ、12kmちょっとでこのペースは先がやばい」と不安が駆け巡る。
しかし、今そこまで上げなければ、前に進まない。
まいった。計算外だ。

色んな不安が込上げる中、前回できなかった50kmの事を思い出す。
良かった事、悪かった事、走馬灯の様に頭の中を駆け巡る。
不安が膨らみ出す。


でも、そんな時に搬送のタマを見る。
空気を読んでないのか、メチャクチャ能天気な顔をしている。

思わず笑ってしまった。


そうだ、「先を考えると辛くなる。今のベストを尽くそう」。

体の辛さは変わらなかったが、気持ちが凄い楽になった。

タマに感謝だ!

本当に少しずつであったが、茅ヶ崎に進んできた。
本当に一歩、一歩と言う感じだった。


水温が高い事による変化だと思うのだが、前回は甘いものが飲みたかったのに
今回はスポーツドリンクを体が欲した。
スイカなども食べたかった。
冷たいものを体が欲していた。
本番もきっと暑いだろうから、この経験は活かそうと、誓う。


茅ヶ崎に着くと誠がカヌーで現れた。
やっぱり誠は安心する。
それは体重のせいなのか、性格なのか分からない。
でも、あの大柄でポニョなシルエットと、無表情に近い笑顔には
安心感が詰まっているな~。っと勝手に確信。
「よー、大変だったぞ!」
「そう見たいっすね~。」っと、いつもの会話。



茅ヶ崎到着時点で25kmだった。
今回は0~30km、30km~40km、40km~50kmの3つで泳ぎ方を変えようと思っていた。
だから、辻堂方面に2.5km向かい、往復5kmを作った。

辻堂方面に向かい改めて感じた事は茅ヶ崎~辻堂、辻堂~江の島に向かうに従い
海は汚くなっていく。
水面に漂う海藻の量はもちろんのこと、ペットボトルや流木、プラスチックのカスなどが多くある。

「いつかは海の中の海岸清掃をやるのもいいかもな」何て思っていた。

ちなみにクラゲも多かった。
数箇所だがやられた。
ただ、烏帽子じゃなかったことが救いである。



30km終わってからは誠とタマで再度平塚方面を目指す。
誠が隣にいると、いつもの瞑想状態に入りやすい。
他のクルーの楽しさと違う、落ち着いた世界になる。


よりによって、流れの向きが変わっていて
平塚方面に向かう時にはまた向かいとなっていた。
マジかよ。。。。
もう笑うしかない。
喜怒哀楽なく、その変化を受け入れる。



このぐらいで気付いた事だが「食べる→消化→エネルギー→枯渇」のサイクルが何となくだが分かってきた。
また、どういう状況が水分不足なのか、どういう感覚がエネルギー枯渇なのかも感覚的に分かってくる。
これは嬉しい発見だった。


手足からのダルさは枯渇、体の中からのダルさは水分不足。
何となくそんなバロメーターが自分の中に設定された。



~続く(長くてすいません)~