君さえいれば、何もいらなかった。ただ、本当に君が欲しかった。愛してほしかった。
「ねぇ、ねぇ、私は君が好きだよ」
「うん………知ってる」
柔らかく微笑むものの、君は私に返事をしてくれないから。でもいいかな、もう。君が私の気持ちを知っているっていう事実があるならそれで。

それから、それから。私はあまり『好き』と言わなくなった。気持ちは変わっていないどころかさらに愛を増しているのに、言葉が廃れて出てきてくれない。たった一言なのにおかしいね。こんな重み、あったかなぁ。
「最近言わなくなったね、好きって。僕のこと嫌いになったのかい?」
悪戯なようで少し哀しげな顔を向けるから私は正直に答える。
「違うんだ、君を嫌いになるわけはない。けれどね、言葉が重いのだよ。私がその言葉を口にするには重すぎて、使えなくて、言葉が廃れてしまったのさ」
彼は少し目を見開いて、それからクスッと笑った。嫌な笑いではなく、とても綺麗なものだった。
「ねぇ、応えてあげようか」
唐突に彼は言った。いつかの私の想いに彼は応えてくれるという。言葉の重みを知った今の私に、あの時の答えを。私はそっと泣いた。哀しかったわけではない。嬉しくて、涙が出てきたのだ。ほら君の答えを聞いてさ、私はこんなにも幸せになれるのだから。




「僕もね、君が好きだよ」