陛下が退位の恒久制度化を望んでおられることをご学友が明らかにした。この発言は、先日の秋篠宮殿下の会見に続き、安倍政権に対する強烈なメッセージだと思う。私はこれまで静かな環境での議論が進むことが望ましいと考えてきたが、ここまで見解が分かれると、踏み込まねばなるまい。

私は、摂政も、一代限りの特別立法も、陛下が積み上げてこられた「国民に寄り添う天皇像」を否定するものだと考える。東日本大震災に見られたように、国民の中で、そうした天皇像が定着していることを考えても、摂政や一代限りの特別立法は認めがたい。

陛下には職業選択の自由、居住移転の自由、言論の自由をはじめ、基本的な人権が保障されていない。憲法上、天皇は国政に関する機能を有しない(第4条)ことには留意が必要だが、ご高齢になられた今、静かな生活を送る選択を認め、自らが守ってこられた国民と寄り添う天皇像を後世に残したいという思いを持たれることは、人として自然なことだ。摂政や一代限りの特別立法を唱える方々の見解は、私に言わせれば「天皇唯物論」だ。かつて閣僚として陛下の激務を見てきたものとして言いたい。陛下は物ではない。人なのだ。

皇室典範を改正して、生前退位を明確に位置付けるべきだ。譲位は明治以前のわが国では何度も行われてきた。保守派を自認する人たちがなぜ、それを否定するのか。

併せて、女性宮家を創設すべきだ。女性天皇、女系天皇については様々な考えがあろう。しかし、このままでは、お若い皇族は悠仁親王のみになり、悠仁親王と結婚する女性に凄まじいプレッシャーをかけることになる。それこそ深刻な人権問題だ。そして現状を放置すれば、確実にその時は訪れる。皇族が悠仁親王だけになれば、皇統が断絶するリスクは極端に高まる。そのリスクを回避するために、女性宮家だけは早期に創設しておくべきだ。旧皇族や養子を迎えるべきと主張している人もいるが、私は現実的だとは思わない。国民の皇室に対する信任は急激に下がるだろう。

保守政党を自認する自民党が、譲位や女性宮家の問題に正面から向き合わないのはなぜか。皇統を守るために発言する議員はいないのか。どうしても理解できない。自民党が動かないのであれば、我々が提案しなければならない。