米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』読了。



「小市民シリーズ」の最後(?)

『春期』が2004年

『夏期』が2006年

『秋期』が2009年

『巴里』が2020年

『冬期』が2024年

ファンは15年も待ったことになる。すごい。

私は『冬期』の存在を知って読みたくなり、そのためにまず『春期』から読み始めることにしたのだが正解だった。

本はシリーズであっても単体で完成して楽しめるものであるべきと思っている。

このシリーズだって単体で楽しめる。

でも、『春期』から読んでこその楽しみが『冬期』にはあった。

逆に『冬期』を読んで興味を持った人が『春期』を読んだのでは味わえないものがある。

解説にもあったけれど、『冬期』を読む前に『春期』だけは既読であったほうがいい。


シリーズを貫いてずっと謎だった小鳩くんと小佐内さんの出会い・互恵関係の始まり、ふたりの中学生時代のミスが明らかにされる。

今回はシリーズ最大の事件、轢き逃げ。

あろうことか被害者は小鳩くん。

小鳩くんは今回重傷で病院のベッドで身動きもままならないまま、3年前の類似した轢き逃げ事件のことを考える。

今と記憶をない交ぜにして語られる。

どちらも顛末はどうなるのか、2つの事件に関連はあるのか、もちろん小佐内さんが暗躍しつつ話は進んでいく。

読んでいて感じる違和感、疑問は全て明らかにされるのでスッキリできる。

小鳩くんが初めての入院生活で迂闊になっているので読者が抱くことになる違和感や疑問が小佐内さんの機転と小鳩くんの覚醒で解決する。

細かい趣向まで書き連ねたいほどいろいろとおもしろかったがやめておく。


さて、ふたりの互恵関係は終わりなのか?

「小市民」シリーズは終わりなのか?

小鳩くんは終わりだと思っているようだが、小佐内さんの言によると少なくともふたりの互恵関係は終わりではない。

ふたりの間には恋愛感情も友情もないのだけれど。

それにしても全巻通して小鳩くんて本当に人の心がわからない。