伊良刹那『海を覗く』読了。



ちょっと読んだだけで

「すげぇ。三島みたい。」っていうのが

馬鹿みたいと思った。

特に「すげぇ。」っていうのが酷い。

三島の絢爛豪華な流麗な美しい文体を意識しているのかわからないけど、一見して小難しいだけ。

絶対使わないような熟語、読めないような漢字だらけで、しかも地の文のみならず高校生同士の会話までその調子。

それでいて、あれ?と思うほど平易なところもある。

初めのうちはさらっと読むのでは意味がわからず、一文一文ゆっくり考えて読まないと何を言っているのかわからなかった。

それが新しいの?

三島や川端のような文体の美しい作家の本は読みやすい。

生と死。恋と愛。夢想と現実。芸術家と芸術。美。認識。破滅。

これらについての作者の断定なのか同じ主張を繰り返し繰り返し描いているので、直に難しいこともなくなって読めるのだが、

果たしてこの主張も新しいのか?

扱っているテーマも懊悩も散々文豪たちが格闘してきたものだし、この作品の結末を見るまでもなく、それを体現した者すらいた。

これなら村上春樹の初期の作品を今読んだほうが尚新しい気がする。

もっと17歳らしい瑞々しい?迸るような?感性を期待した私のほうが間違っているのか?

難しいことと、深遠であること貴重であることはイコールではない。

格調高く見せることと美しいことはイコールではない。

筋を述べよと言われたら30字くらいで足りてしまう。

とても薄い本なのにとても高かった。理由がわからない。

朝井まかての新刊みたいに高いけど分厚くて、どれだけの労を要したかを思うと納得できるものもある。

この作品は、どこでそんな言葉覚えたの?頭いいんだね、こんな文章完成させて

くらいしか感動するところがない。

賞の選考会で激論の末受賞したというのは納得。

賛否激論になるだろう。

次に何を書くか。