トーベ・ヤンソン『ムーミン谷の彗星』読了。
(下村隆一訳)


トーベ・ヤンソンて男性だと思っていた。
アンデルセンもグリムもエンデもディズニーも男性だし、トーベって男性ぽい。恥ずかしい。

ムーミン谷に彗星が衝突するらしいと聞いたムーミントロールとスニフ、途中出会ったスナフキンは、遠くおさびし山の天文台に真実を探りに行く大冒険をする。
帰り道ではスノークとスノークのおじょうさんも合流。
赤く燃える彗星がだんだん近づいて来る恐ろしさや、それによって海が干上がり湯気の立つ亀裂だらけの海底を竹馬で歩いたりする様子、こわい生き物との対決など、大冒険の模様がドキドキしてとてもおもしろい。
こわいことばかりではなく、楽しいこともたくさんある。
作者の想像力、創造力がすごいなあって、読んでいると口角が上がってしまう。

ムーミンは子どもの頃テレビアニメを見ていた知識しかなかった。
ムーミンて何の動物?カピバラ?
ムーミントロールはカバでもカピバラでもなくムーミントロールという種族で色は白なのです。
ノンノンだと思っていたスノークのおじょうさんはスノークという種族で、感情によって紫や黄色と色が変わる生き物です。
スナフキンは人間じゃない。
スナフキンて自由でかっこいいなって子どもながらに思っていたけど、
小説の中では、みんな自由に自分の生き方をしているんです。
そしてムーミントロールは勇敢な男の子、ムーミンパパは頼りになるし、ムーミンママは包容力があって何でもわかっていて、あたたかな居心地最高の家庭。
トーベ・ヤンソンの生い立ちが作品世界に色濃く反映されています。

このムーミン全集第1巻でいちばん心に沁みた言葉。
スナフキン
「なんでも自分のものにして、持って帰ろうとすると、むずかしくなっちゃうんだよ。ぼくは見るだけにしてるんだ。そして立ち去るときには、頭の中へしまっておく。ぼくはそれで、かばんを持ち歩くよりも、ずっと楽しいね。」
スナフキンの持ち物はハーモニカだけ。テントもあったけど冒険に邪魔だから手放しちゃった。

所有欲がないって楽かもしれない。
集めるのが好きな人、集めない人、どちらもいいと思うけど、私は中間かなあ。
でも、なるべく物は少なくしようと思いました。