美桜が自分の病室に戻って１時間後の事。
美桜がやっと目覚めた。
私・・どうしたのかしら？
サラ先生の診察室に行ってカモミールティーを飲んで
急に眠くなって‥その後の記憶が全くない。
ここにどうやって戻ったのかさえ分からない。
ただ不思議なのは、あんなに憂鬱な気分が一切無くなった。
気持ちが晴れ晴れと気分がいい。
あのお茶に秘密があるのかしらね？
凄く美味しくて・・２杯目も残さず飲んだ。
その事はハッキリ覚えている。
私の治療はどうなったのかしら？
何をされても意識は無いのだから分からない。
私が寝てしまったから・・何もしなかったの？
そう言えば、おばあ様は今日は見舞いに一度も来てない。
どうかしたのかしら？
まさか・・御病気？
毎日、欠かさず来てくれてたのに？
おばあ様が
来たら来たで煩わしいが、来ないと何故か心細くなる。
もう夕方だし‥今日はもう来ないわよね？
後で電話してみようかな・・・。
でも、私おばあ様の住んでる邸の電話番号も
携帯番号も知らない・・・。
そんな事を考えてたら、ドアをノックする音が聞こえ
おばあ様が執事の江藤と一緒に入って来た。
「美桜ちゃん、遅くなってごめんなさいね？
サラ先生の診察はどうだったの？
何か思い出したかしら？」
「おばあ様、今日は随分遅かったですね？」
「サラ先生が美桜ちゃんの診察するから、
お見舞いは夕方からにしてとご連絡頂いたのよ？」
「そうだったんですか？私知らなくて・・
おばあ様がいらっしゃらないから何かあったのかと・・。」
「あら、聞いて無かったの？サラ先生には電話で美桜ちゃんに夕方に
お見舞いに行くと伝えてって言っておいたのよ？
嫌ね・・忘れたのかしらね？
それで、美桜ちゃん記憶の方は？」
「残念ながら記憶は戻ってません。」
「あら、そうなの？でも昨日よりは具合がいいみたいね？
声が違うわ。サラ先生はどうかしらね？
NYから来て貰ったんだけど、効果が出ないなら他の先生を捜して
代わって貰っても構わないのよ？」
「まだ、１日目ですから・・わかりません。」
「そう・・そうね、もうしばらく様子をみましょう。
今日は、邸から夕食を持って来たのよ。
美桜ちゃん食欲が無いみたいだから・・。
江藤、お弁当を出してあげて。」
「はい、奥様」
重箱2段に入ったお弁当は色鮮やかでとても綺麗だった。
「美味しそう。」
「そうでしょう？篠崎が訳があって辞めたから料理長を山田に変えたの。」
「篠崎さんって？」
「ええ、あなたが邸に居た頃からずっとうちの料理長だった人よ？
覚えて無いかしら？彼、交通事故に遭ってね・・可哀想に今は車椅子生活になってしまったのよ？」
「交通事故？私、その人の記憶は無いけど・・車椅子だなんて大変ですね？」
「本当にね・・でも今後の生活に困らない様に多めに退職金を出してあげたの。
事故の保険金も入ってるから働かなくても生活は普通に出来ると思うわよ？
江藤そうなんでしょう？」
「はい、篠崎さんは大変奥様に感謝されてます。」
「そうなんですね・・。」
「私はね、自分に関わった人間には皆幸せになって貰いたいの。
特に使用人達には待遇を他の処より良くしてるのよ。」
「おばあ様は、素晴らしい方なんですね。」
「嫌だわ、そんな言い方。
他人行儀な、あなたは私の可愛い孫娘なのだから
もっとフランクな話し方をしてね？」
「美桜さま、お弁当取り分けましたのでどうぞ。」
「ありがとうございます、江藤さん。」
「美桜さま、私にさん付けは止めてくださいね？
以前の様に江藤とお呼び頂いたほうが私は嬉しいです。」
「‥それは、記憶が戻ってからでいいですか？
呼び捨てなんて慣れて無いので・・。」
「仕方ないわよ、江藤。美桜ちゃんには記憶が無いのだから。」
「奥様それでは、私が困ります。」
「慣れてくれば、美桜ちゃんも江藤と呼ぶようになるわよ。
前のようにね。」
・・使用人さんと言っても私が雇ってる訳じゃない
それに、父親ぐらいの年上の人を呼び捨てなんて
出来ない・・。
でも記憶がなくなる以前は呼び捨てにしてたんだ。
私ってなんて・・偉そうな娘だったんだろう。
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