翌朝、二日酔いの晴一は朝の4時半には起きて菓子の工房に籠り
餡子を炊いている。
どんなに酔っても必ず朝の4時半には起きて、餡を作るのが晴一の日課である。

 

つくしは、朝の5時半に目が覚めた。

 

背中に誰かが張り付いて重くて身動きが出来ない。

 

「もう・・また類なの?朝から金縛りに遭ったかと思った。
また勝手に私のベッドで寝て・・こら離しなさいってば・・。
ここは、花沢の邸じゃないのよ?おじいさんに知られたらまた嫌味言われちゃうからね?」

 

「zzzz・・zzz・・」

 

「嫌だ、類ったら一体昨日は何時に寝たのよ?」

 

類の腕がつくしの細い腰に巻き付いては離れない。
仕方なく、腕を擽るが寝息を立てて深い眠りの中にいる、
類には効果が全くない。
少しづつ身体を捩じりながらどうにか類の腕の中から脱出出来たつくし。
類の頬にキスをしようと顔を近づけた。

 

「うっ・・お酒臭い・・。類どんだけお酒飲んだのよ?」

 

王子様が、お酒臭いなんてあり得ない。
どうせ、おじいさんが無理やり飲ませたんだ・・・。
だって普段の類はお酒なんかあまり、飲まないしこんなに
お酒の臭いをぷんぷんさせないもの。
飲み疲れてそのまま、シャワーも浴びないで寝たんだわ。
これは、起きたら直ぐにお風呂に入れないと・・・。
キスも出来ないじゃない。

 

つくしは一人ご立腹で着替えを済ませて
おじいさんの工房に行ってみる事にした。
類にはちゃんとメモを残して。

 

【類おはよー。お酒臭いよ?起きたら必ずシャワー浴びてね? つくし】

 

工房ではおじいさんが一人で大釜の前で餡子を炊いていた。

 

「おじいさん、おはようございます。」

 

「おお、つくしか、おはよう。」

 

「おじいさん、早いんだね?昨日夜遅くまで類と飲んでたみたいだけど大丈夫なの?」

 

「儂は慣れておるからのう。あの若造はまだ寝ておるのか?」

 

「ええ、随分酔ってたみたい・・。いつもこんなに早いの?」

 

「朝の4時には起きて4時半にはここで餡を炊くのが
わたしの、日課だ。」

 

「おじいさんだけで?お店の職人さんに手伝って貰えばいいのに。」

 

「これは、儂の仕事だからな、誰にも任せる気は無い。
つくし、悪いがそこの銅鍋を取ってくれ。」

 

「あゝはいどうぞ。」

 

「つくしは晴男に餡子の炊き方を習ったのか?」

 

「ううん、餡子はお父さんとお母さんしか作り方知らないの。」

 

「つくしも作ってみたいか?」

 

「うん、そりゃあ・・作ってみたいよ?」

 

「わたしが、一から教えてやろう?明日朝の4時に起きる事が出来るならな?」

 

「うん、分かった。でも1日で覚えられるかな?」

 

「くくっ、それは無理だろう?私だって晴男だって一人前になるには修業を
何年もやったんだから・・。だがつくしには餡子づくりくらいは覚えて置いて欲しい。
お前も牧野の娘なんだから・・結婚しても牧野の餡子の味だけは
覚えていて欲しんだ。
和菓子の基本だから、これさえ知ってればお饅頭だろうが
おはぎだろうが、桜餅だろうが作れるからな。
将来子供が出来たら、ひな祭りには桜餅、5月の節句には柏餅
彼岸にはおはぎを作って食べさせてあげなさい、
それが私のつくしへの遺言だ。」

 

「はい。餡子の作り方を教えて貰ってきっと子供に食べさせるね?
でも遺言だなんて、縁起が悪いから言わないでよね?
まだまだ、おじいさんに私は一杯甘えるつもりなんだからね?」

 

「そうか?つくしが甘えてくれるなら嬉しいぞ?
何が欲しい?靴かバックか洋服か?」

 

「物じゃ無いよ・・。強いて言えば‥時間かな?
おじいさんと過ごす時間。少し仕事を休んでさ・・一緒に
旅行に行ったりゆっくりお話出来る時間。」

 

「なんだ、つくしは欲が無いな。」

 

「そうかな?十分欲が深いと思うけど?忙しいおじいさんに
時間作って貰って旅行とか最高じゃない?
///今まで逢えなかった分取り戻さないとね?」

 

「つくし・・・。」

 

「だから、餡子作り教えて貰えるのも凄く嬉しいよ?おじいさんを独り占めできるもの。
・・・明日楽しみにしてるね?」

 

「あゝ・・・。」

 

つくしは晴一の目に光るものを見たがそれには敢えて触れなかった。
自分の目にも光る温かなものが流れたから・・・。


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