類はつくしの言葉にショックを受けていた。
待たせてた車に乗り込み、一旦は社に戻るように運転手に告げ
社に戻って自分の執務室に居ても
落ち着かなくて・・・。また直ぐに車を呼び運転手に牧野へ行ってと目的地を告げる。

 

牧野が見渡せる、目黒川を挟んで反対側の道に車を停車させて
暫く様子を見る類。

 

時間は19時になり店を閉めようとつくしが出て来る。
その10分前くらいから牧野の店の前に一人の男が立っていた。
直ぐに類にはその男が、つくしが言ってたデートの相手だと分かった。
あきとかいう、女みたいな名前の男。

 

何やら暖簾を仕舞いに来たつくしとその男が話をしているのを
類は車の中から見ていた。
二人が何を話しているのかは全く分からない。
ただ、話が終わっても男はそのまま店の前でつくしを待っていて
20分もしない内に、つくしが可愛いワンピース姿で店の前に戻って来たのを
類はじっと見ていた。
二人は並んで歩いていく。

 

類は運転手に二人の後を付けるように伝えた。

 

二人は暫く歩いて、1軒のイタリアンレストランへと入って行った。

 

窓際の席に案内されて座った2人は、食事を始めるようだ。

 

類はどうするか考えたが、自分が現れたらつくしがまた怒るのが分かるから
このまま店の外で2人が出て来るのを待つ事にした。
その代わり何処かに電話を入れたようだ。

 

***********************

 

「つくしちゃん、コース料理でいいかな?」

 

「はい、お任せします。」

 

「じゃあ、このコースを2人前・・それとこの赤ワインをボトルでグラスは2つ」

 

「はい畏まりました。」

 

スタッフがワインのボトルを開けてくれて、グラスに注いでくれる。
二人は乾杯をした。

 

「それじゃ、乾杯。」

 

「はい、阿木さんお誕生日おめでとうございます。乾杯!」

 

飲みやすい口当たりの良い赤いワインは、冷たく冷えていて
飲むほどにその口当たりの良さに後をひく。

 

アンティパストにはホワイトアスパラの生ハム巻き、スモークサーモンのクリームチーズ和え
プチトマトのカプレーゼ、チーズガレットのそら豆のせが白いスクエアーのお皿に載せられてくる。

 

「わあ、おいしそう。」

 

「つくしちゃん、遠慮しないでどうぞ。」

 

「はい、いただきます。」

 

満身の笑顔をで大口を開けて次々に食べるつくしにちょっと驚きの顔をした阿木。

 

まるで・・子供みたいな女だな。色気より食い気か?だが不思議と嫌な感じはしない。
こんなに美味そうに食う女は見た事が無いな。

 

次にプリモ・ピアットのマルガリータが運ばれて来た。

 

熱々のピザにつくしはニコニコ笑顔である。

 

ピザの後にはセコンド・ピアットのカサゴのアクアパッツァと子羊の赤ワイン煮込みが
運ばれてくる。

 

普通の女性はこんな沢山の料理は食べきれなくて残すが、つくしは違った。
出された料理は全て、自分の分を美味しそうに残さずに食べる。
阿木が食べきれない分まで、勿体ないからとつくしが食べる。
阿木は、男と食事をしているのに残すと勿体ないと言うつくしの
飾らない態度が何故か好意的に受け取れた。


 

「ふっ~う美味しかった。」

 

「・・・。いやあ・・綺麗に食べてくれて感激したよ。
つくしちゃん見かけに寄らず、よく食べるんだね?」

 

「だって勿体ないじゃないですか?美味しいですし残すと勿体ないでしょう?」

 

「でも今どきの若い子は男性の前ではそんなに食べたりしないでしょう?」

 

「そうですか?」

 

「あんたって変わってるって言われない?」

 

「うーんそうですか?あの・・もしかして阿木さんってお金持ちのボンボンだったりします?」

 

「お金持ちのボンボン?俺がそんな風に見える?」

 

「だって、阿木さん私を変わってるって言うから・・何処かのお金持ちで
お付き合いがあるのは、こういう場所では大口開けてご飯食べたりしない上品な人ばかり
見て来てるのかなって?違いますか?」

 

「俺は金持ちのボンボンじゃないよ?ちゃんと大学卒業して働いてるし・・。
自分の稼いだ金以外は何も持っていない。」

 

「そうですか・・。失礼しました。」

 

「つくしちゃんこそ、老舗の和菓子屋のお嬢様だろう?」

 

「うち?うちは別に商売はやってますけどお嬢様では無いですよ?
まあ、見習いの子は私をお嬢さんって呼んでくれてますけどね?」

 

ふーん奥ゆかしい事で・・。年商25億円のお嬢様が良く言うよ・・。
金は有り余るほどある癖に・・・。
静華に頼まれたけど・・こいつを騙して金を巻き上げるのもいいかもしれないな?
こんな女ボロボロにして捨てるのもいいかもな?
なんか癪に触る女だな。

 

金はあるが、それを表には出さないで庶民の振りをしてる
偽善者・・・。いけ好かない女だな。


 

「阿木さん・・?あの・・阿木さん。」

 

「あゝなに?」

 

「すみません、ちょっと私トイレに行ってきます。」

 

「あゝ行ってらっしゃい。」

 

つくしはトイレに行く振りをして、スタッフに彼が誕生日だからデザートはバースディーケーキを頼んだ。
そして支払いもつくしが先に済ませて置いた。

 

つくしがトイレから戻って暫くすると、明かりが消えて小さなバースディケーキが運ばれて来た。
プレートにはちゃんと阿木の名前が入っている。
驚きを隠せない阿木。
お店の人と一緒にバースディーソングを歌うつくし。

 

「Happy birthday to you,Happy birthday to you,
Happy birthday, dear 阿木
Happy birthday to you.」

 

「おめでとうございます!」

 

「あゝ・・ありがとう。」

 

「さあ、ローソクの火を消して?」

 

「あゝ・・・ふっ~」

 

「パチパチパチ・・おめでとうございます!!!」
 
店のスタッフや店内の客からも祝福を受ける。

 

「なんか・・照れるな。俺こういうの生まれて初めてかも知れない・・。」

 

「えっ?」

 

「あゝ俺両親を早くに亡くしてるから・・・。生まれてから一度も人に誕生日を祝われたことねぇんだわ。」

 

「そうだったんですか・・。」

 

ローソクの火を消したケーキは一度下げられて、カットして綺麗にお皿に載せられて
再び二人の席に持ってこられた。

 

それを二人で食べた。

 

阿木は少しだけ心が痛んだ。今日は阿木の誕生日でもなんでもないのだ。
つくしを誘う為に誕生日だと嘘を吐いたのに、つくしは自分の誕生日を態々祝ってくれた。
誕生日を一度も祝って貰った事が無いというのも、嘘だった。
神野の家で蒼や梓が生まれるまでは、毎年祝って貰っていた。

 

ケーキを食べ終えたつくしは、阿木には支払いの事も一切伝えずに先に帰るといい
脱兎の如く店を先に出た。

 

つくしの逃げ足の速さに阿木は呆気に取られて言葉を失くした。

 

くそっ、逃げ足の速い女だな?俺に何かされるとでも思ってるのか?
まあいいか・・今日の処は逃がしてやるよ。
阿木は溜息を吐き席を立つ。
支払いを済まそうとした阿木はつくしからのメモを手渡され支払いが終わっている事を
店の者から聞いた。

 

阿木さん、今日は大変ご迷惑をお掛けしました。
服を濡らしたお詫びにここは奢らせて頂きました。
美味しいお店を教えてくださりありがとうございました。

 

                       牧野つくし

 

ふっ、ありがとうだって?自分でお金を払っておいて・・本当に嫌味な女だ。
誕生日だなんて嘘も見抜けずに、直ぐに人を信じるのは
騙すには最高の女だけどな?情に脆いって言うのは致命的だな。
だが、俺にとっては有難い。同情を誘えばあの女は勝手に騙されてくれる。
馬鹿な女だな・・・。静華に頼まれない限り俺が相手にもしないような女。
静華が好きになった、花沢類とはどうやって知り合ったんだ?
そういや・・目黒川沿いの再開発に花沢も関係してると静華が言ってたな。
その関係で知り合ったのか?

 

静華の為だ、さっさと二人の関係を終わらせてやる・・。
牧野つくしが好きな男って、やはり花沢類なのだろう。
・・・、奥手な女が自分の気持ちに漸く気付いたって事か?
俺がデートに誘ったから、気付いたのか?
どっちらにせよ、早い処片付けるしかないな。

 

つくしちゃん、あんたの恋は悪いが実る事は無い。
俺が必ず潰してやるよ。
覚悟しておくんだな・・。




 


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