こちらはyahoo!ブログふんわりのんびりから引っ越して来たお話になります。
2014年11月4日に投稿したものを加筆修正しております。

 

 
昨夜は、眠れなかった。頭の中を色々な事が駆け巡り
自分で整理出来ない。
 
ここに来た頃はケ・セラ・セラなんて言ってたけど、現実はそう甘くない。
自分の才能が他の人に比べて見劣りするのは、仕方ないが・・・。
こればかりは一生懸命に勉強すれば開花するものでも無い事をこの2年で知った。
周りを見れば仲間達は皆、才能に溢れていた。
 
美花は有名デザイナー一条譲の娘だから生まれた時から親から
元々受け継いだ才能があるんだろう。
スケッチブックを見せて貰ったデザイン画は、もう既に完成された作品のようで、
先生から評価も高い。
 
奈々のデザインは彼女らしく、女の子が好きな色彩を使い柔らかなラインが素敵だ・・・。
女の子が憧れる夢のある作品で、自分の個性をしっかり持ってる。
何度か佳作とか、新人賞とか貰ってるのも分かる。
 
陽介の作った作品は、デコルテのカットや、装飾が変わっていて斬新的で、常に人の
目を引く作品だった。大胆な背中の開いたドレスは洗練されていて金賞を取った。
 
陸の作る作品は、どこかオリジナリティーに溢れて独創的。審査員から絶賛され
注目されている。波をイメージしたドレスはドレーブを上手く生かして迫力ある作品だった。
 
尊は和を感じさせる作品が多く、和と洋の融合させた作品も多く、その数点は既に
一つの作品として、ファッションショーでも紹介されている。呉服屋で培ったセンスは流石だ。
 
仲間はそれぞれ好評価を受けてる中で私だけは違っていた。
 
私の作品は誰かの真似でしかなく、あなたの個性がまるでないと評価された。
 
それに、テーマも、伝えたい物が何も見えないと感じられないと・・・。
 
スミス氏も何故こんな娘をデザイナーにしようなんて、無謀すぎると
 
 
私にもちゃんと理解できた・・・。早口のフランス語だったけど・・・。
 
私には皆みたいになんの才能もないのだ。こんな才能も何もない私が、
 
パリまで、来て・・デザイナーになるなんて無謀すぎる夢だったんだ。私は自信を無くしてた。
 
折角アーサー・スミス氏に、チャンスを貰ったのに情けなくて、
 
スミス氏に、恥をかかせているのではないか?
 
 
あまりにも酷い、私の評価にきっと吃驚してるに違いない・・・。
 
花沢類に対しても・・・。私みたいに才能も、家柄も何も持たない人間が
 
好きだと言って、果たして迷惑じゃないのか・・・。悩んでも答えは出ない。
 
焦りだけが…残るだけ。消化出来ない思いが日々私を悩ます。
 
そんな気持ちを切り替えたくて、私は重い腰を上げて、
 
パリの街を散策することにした。
 
 
この街は歩くだけでも、素敵な物に出会える。
休みに出かけるときは、景色や人のファッションなどをスケッチするのが癖になった。
小さなノートタイプのスケッチブックと鉛筆と色鉛筆は必ず
バックに入れてある。公園に行けばベンチも豊富にあるからそこで、
移動式のパン屋ポールという名の店で、パンを買い食べる事が多い。
でもコーヒーだけは自分の毎マイボトルに入れて持ち歩く。
以前買ったコーヒーが、高い割に口に合わず、困った。
コーヒーは持参するに限る。カフェに入るような時は、必ずカフェオレを注文する。
これなら、何処で頼んでも味に大差ない。
 
私はルーヴル美術館にやって来た。ここの前に広がるチュイルリー公園は
元々ここにあったチュイルリー宮殿の庭園で、今はここだけが残ってる。
ここには、夏に移動遊園地が来たりして、噴水の池で子供達が遊んでいて
にぎやかな公園で、敷地が広いので、あの考える人で有名な彫刻家ロダンや
歩く人のジャコメッティ等の作品が置かれて、野外美術館になっている。
園内にはクロード・モネの睡蓮が飾られたオランジュリー美術館も
あり、なかなか楽しめる場所で気に入ってる。
 
私はパン屋で購入したパニーニとパン・オ・ショコラの入った紙袋を持ち
園内の空いてるベンチを探した。
今日は噴水の池は、この暑さのせいか、子供を連れた人が多くベンチも空いてない。
もう少し奥に行ってみるか・・・でも、あの子連れのママ達の洋服のスケッチもしたくて
ベンチが空くのを暫く、噴水の池の近くで待ちながら、辺りを観察した。
フランス人は何気なくシンプルでかつ、センスがいい。
一日見ていても飽きない程、色々なお洒落さんがいる。
暫くして一つのベンチが空き、そこに荷物を置き、先程気になった子連れママさんの
服をえんぴつで描いてみた。そうやってコーヒー飲みながら、
買ってきたパンを食べ終わる頃には7枚くらいのデッサンが描けた。
ふと、手を休めて横を見るとふわふわした金髪の3歳くらいの女の子が座っていて
私に笑いかけた。あれ?この子の親はどうしたのだろう?
周りを見渡してもそれらしい人はいない。女の子が、ベンチから降りて池の方へ
歩いていく、暫くそれを見てたが・・・。私はもう一人気になる人を見つけ、えんぴつを持って
またデッサンを始めた・・・。その時池のほうでバシャンと大きな水しぶきが上がり
子供が池に落ちたと騒いでる声に・・・。もしかしてさっきの子かも・・・。と思い
急いで、池に走った。池は大人のひざ位も深さはないが・・・。子供には危険な深さだ
子供が溺れてる姿に、何も考えず池に飛び込み、その子を抱き上げた。
まだ息はしてる・・。水を飲んでるから吐き出させないと・・・。慌てて芝生に連れて行き、
自分の片膝をついて、太ももの上に子供をうつぶせに乗せた、頭を下げて顎を持ち
肩甲骨の真ん中を軽く叩いて、さすった。何度か繰り返すと、子供が噎せながらも、
水を吐いてくれた・・・良かった・・・。無事だったわ。
その様子を見てた周りからは拍手と賞賛の嵐を受けていた。
 
その中の親子連れの一人の母親が子供用のバスタオルを貸してくれて、
「あなた、素晴らしいわ。他人の子供を助けるなんて・・。」と言った。
私はバスタオルを借りてその子の濡れた体を拭いた。
私は「誰かこの子の母親知りませんか?」とフランス語で叫んだ。
 
人混みをかき分けながら、若い女性が駆け寄り、子供を抱き上げ
ルナごめんね、大丈夫、怖かったね。と子供の無事を確かめるように身体中を
触っている。バスタオルで拭きながら・・・。
「ありがとう、ルナを助けてくれて・・・。ベビーシッターから逃げて居なくなって探してたのよ。
小さな子が池に落ちたって聞いて来てみたら、ルナだった・・・。
本当に助けてくれてありがとう。」
 
私にお礼を何度もいう母親、私は今度は気を付けてね。といい立ち去ろうとした。
 
私の腕を掴んで離さない、その母親
「駄目よ、そのままの格好じゃ、今車廻すから家に来て、私の服に着替えてからにしてね。」
 
母親が片手に抱いてたルナを電話を掛けるために下ろした途端、今度は母親の代わりに
ルナが私の手を握り離さない。私はこのままでいいのに・・・。と言ったら
 
「でも、下着が水で濡れて丸見えよ。それじゃ…帰れないわよ?」
「ぎゃ~本当だ、下着が池の水で丸見えだ・・・、恥ずかしい。私この格好で帰ろうとしたの?」
「もう車公園の入り口に着いてるから急ぎましょう」
そのまま、この親子に着いて行くことになった。
彼女が連れてきたのは、パリの高級住宅街16区、
ブローニュの森に隣接し閑静な所だった。
重厚感溢れる、アパルトマンの最上階だった。
「あなた、名前聞いてなかったわね。?私はサラ・マイヨールそして、娘のルナ,よろしくね。」
「牧野つくしです。日本人です。」
「ツクシね。早速シャワー浴びてね。着替えは、バスルームに用意して置くから」
「はい、お借りします」
「ルナはこっちのバスルームに来なさい。洗ってあげるわ、
私の愛しい、ずぶ濡れ子猫ちゃん。」
「きゃあ。あはっは・・。」
ルナが、母親から逃げるように笑いながらバスルームへ駆けて行く。
 
シャワーから出ると、新しい下着にシンプルなレモンイエローのミニ丈のワンピース
わぁ、これ高そうな服・・・。下着もシルク・・サイズもピッタリ。何故見ただけで、サイズ
わかったんだろう?着るものもないし、お借りしよう。クリーニングに出せばいいよね。
下着は、代金受け取ってくれるかな?
 
リビングに戻ると、ルナが可愛らしいオレンジ色のワンピースに着替えて髪の毛を
リボンで結んで貰っていた。「あの子のワンピースこの服と同じメーカー?
デザインを少し変えてはいるけど同じだわ。」
 
「あの、すみません。素敵なワンピースお借りして、それに下着まで・・・。ワンピースは
後でクリーニング出してお返ししますね。その下着の方は・・・。代金を・・・。」
 
「あら、それはもうあなたの物よ。ツクシへの感謝の気持ちですもの。
やっぱり、あなたに似合うわ。」
 
「でも・・・」
「気に入らない?」
「これ、お高いのでしょう?」
「ふふっ、それ私がデザインした服なの、
娘の服も、私が今着てる服も。」
「デザイナーさんなんですか?サラさん。」
「そうよ。一応ね。ツクシは留学生?何の勉強してるの?」
 
「私は…。デザイン学校へ・・」
「まぁ、何のデザイン?」
「一応服飾を・・・。」
「学校は何処に通ってるの?」
「11区にあるモダール・アンテルナショナルです。」
「あら、奇遇ね。私の先生の娘が通ってるのよ。」
「そうなんですか?誰だろう?」
「一条譲の娘の・・・。美花」
「美花は、友人です。」
「そうなの・・・。まぁ今度一緒に遊びにいらっしゃいな。」
「ええ・・・。」
「うん?何かあったの?美花とそれとも別の事?」
「え・なんでわかるんだろう・・。」
「私も色々学校に行ってる時悩んだから・・・。」
「私で良ければ相談に乗るわよ・・・。ツクシ」
私はサラさんの言葉を聞き・・・。涙を流してた・・・。溢れる涙を止める事が出来なかった。
 
 
 

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