同室者のナツさん(※仮名)は
85歳で一人暮らしを
されている
とても元気な方だ。
数日前に
入院してきたとき
私よりもずっとさくさく歩いて
荷物整理まで手際がよくて。
最初は患者様のご家族かと
思ったくらいだった。
廊下側のベッドだから
朝になると
窓の近くまで朝日を浴びに来る。
「ああ、こんな日はお布団干したいわ」
その一言に
長年自分の暮らしを
大切に守ってきた人の
生活が見えた気がした。
ひとりで何でもできる人なのに
病院では
トイレにひとりで行っちゃだめ。
目薬も塗り薬もナース管理。
「危ないからスリッパは
禁止って言われちゃって」
そう言って
買ったばかりの青いシューズを
少し照れくさそうに見せてくれた。
なんだかその姿がかわいらしくて
でも少し切なかった。
「ねえ、病院食って痩せちゃうでしょ」
ドキッとした。
私は少しも痩せない![]()
ナツさんは昔から健啖家らしく
「朝からスタミナつけないと!
焼肉とか揚げ物とか食べてたから
こんなんじゃ全然足りないのよ。
血圧も下がっちゃった」
と真剣に話す。
かっこいい![]()
85歳になっても
“食べることは生きること”って
身体でわかっている人の
言葉だった。
そんなナツさんは
近く手術を控えている。
いちばん不安なのは
痛みでも、傷でもなくて
“ちゃんと元の生活に戻れるのか”
ということ。
「あなたは若いんだから大丈夫」
そう言われた。
世間的には
もう若くないかもしれないけれど
病院に入院していると
私はまだ“若い側”らしい。
人生いろいろ。
年齢も、病気も、立場も違うのに
病室では不思議と隣同士になる。
ナツさんがまた
好きなものを食べて、
お布団を干して、
朝日を浴びながら暮らせますように。
そして
自由に、自分の足で
おうちへ帰れますように![]()
