みなさんこんにちは。デイトナ500がいよいよ近づいてきましたね。今年は久々の日本のテレビ局での中継もあり、ここ数年の中でも日本での注目度は高めなのかなと思います。

 今回はそんなデイトナ500を面白く見るための事前知識的なものを紹介していきます。


  デイトナ500とは

 1959年から開催されている由緒正しいレースです。その愛称は The Great American Race.インディ500と並ぶ(最近の人気で言えばそれ以上とも)レベルの大イベントで、シーズン最初にして最大のレースとなっています。
 優勝者はシリーズチャンピオンと同等に近い扱いを受け、歴代デイトナ500勝者として一生語り継がれることになります。特にレース後の一週間はテレビやイベントなどに引っ張りだこになるようですね。
 画像のトレバーベインは、デビュー早々でいきなりデイトナ500優勝。以降大きな活躍をすることは残念ながらありませんでしたが、確実に当時を知るファンの記憶に残っているでしょう。
 それくらい大きなインパクトがあるのがデイトナ500です。

  デイトナ・インターナショナル・スーパースピードウェイ

 デイトナインターナショナルレースウェイは一周2.5マイルの超巨大なオーバルです。バンクはターンで31度、フロントストレートの曲がった部分でも18度あり、体感的にはほぼずっと直線という中でのレースになります。ブレーキという最大のオーバーテイクポイントが無い以上、ドラフティングを用いて前のマシンに接近したり追い抜いたりすることが重要になります。
 レースは200周で争われますが、65-65-70と3つのステージに分けられています。燃料が大体40周強ぐらい持つのでどれも1ストップが必要です。タイヤに関してはほぼ消耗せず、レース中1-2回変えれば十二分。最終盤の伸びに若干影響することもあるので新しいタイヤとトラックポジションの見極めが大事になってきます。
 また、チームメイトを始めとした他のドライバーとの協力も不可欠で、一緒に押し合って上がっていったり、パックからひとりで外されないようにすることも戦略の一つになります。
 
 と、去年のデイトナ500のプレビューのコース紹介をコピペしてきましたが、この内容を噛み砕いて行くスタイルで書いていきますね。

  コースの特徴

 先述した通り曲がる部分に大きなバンク(傾斜)を持つ、非常に巨大なトラックです。コーナー半径も非常に大きくどのラインをとってもアクセル全開で抜けていくことが可能です。

 裏を返すとブレーキングというオーバーテイクの機会が無いトラックで、前のマシンを追い抜かすためには空気の流れを理解する必要があります。 

 また、コース幅もマシン3台が横並びという状況が精一杯かなというところ。フォーワイドもいけないことはなさそうですがほぼ見たことがないです。そのため、ポジションを上げるにはスピードが出ている隊列を乗り換えながら走る必要が出てきます。


  レース距離

 レースは200周を65周、65周、70周の3つのステージに分割して行われます。最初の2つのステージは優勝で10ポイント、以降10位まで順位に応じたポイントが与えられるシステムとなっています。ステージ3はレース優勝を目指して走り、結果がそのままレースリザルトになります。

 燃料的には40〜50周がガス欠までの目安になりますが、各ステージ間でコーション(セーフティーカー)が入りみんなピットをする都合、各ステージ共に1回ピットする必要があるような感じになります。

 ピットの際は同胞同士(最近はチームやマニュファクチャラー毎が多いですが)でピットし、隊列から離れないようにする技術が必要になります。


  ドラフティング

 いわゆるスリップストリームという技術です。基本的なスリップストリーム自体はマリオカート等のカジュアルなゲームでも出てくることがあるので聞き慣れた方も多いのでは無いでしょうか。簡単に言うと、前の車を風よけにして走ることで後ろの車のほうがスピードが出やすくなるというもので、このドラフティングがデイトナを制すために最重要な技術です。
 基本的に台数が多くなればなるほど、後ろのマシンが大きな恩恵を受け、隊列全体のスピードが上がっていくようになります。

 また、ドラフティングと簡単に言いましたが、スリップストリームに当たる効果以外にも何個か種類があるのが事実。今回はこの辺も紹介していきます。

バンプドラフト

 NASCARにあまり関わりのないモータースポーツファンの方でも聞いたことのある方は多いのかなと思うバンプドラフト。

 原理は簡単で、前のマシンを押すことで前のマシンを加速させ、自分も加速した前のマシンのドラフティングを受けて一緒に加速するという技術です。単に押すことをバンプドラフトという方もいますが、それらは単なるバンプといったほうが近いでしょう。

 押す方も前のマシンの中心部を真っ直ぐ押したり、スピード差が大きすぎない状態で押したりとかなり気を使います。ここでミスをするとビッグワンまっしぐらなうえ、自身も危険に晒す羽目になるので気を使う必要があります。


サイドドラフト

 NASCARファンの皆様にとってはおなじみのワードですね。横並びになる際に、フロントを前のマシンのでリアタイヤ付近に接近させることで前のマシンのリアにかかるドラッグ(抵抗)が増えて若干失速。その分の速度差で追い抜くという技術です。

 デイトナの場合は前のマシンの横に並びかける時や、隊列から外された時に被害を軽減するためにかけるシーンが目立ちますね。

 何故かNASCARでしか聞きませんが、ツーリングカーやフォーミュラカーのレースでもよく見る技術です。スーパーGTの富士のストレートでもドライバーたちが活用してますが、実況はなぜかマシンの伸びのように言っててちょっと謎だなとずっと思っています。

 脱線しましたが、重要なポイントがもう一つ。上述のように、抜かれ際に相手に対してサイドドラフトをかけて反撃することも可能ですが、この応酬をしてると両者スピードが伸びなくなるため、隊列から置いていかれたり、後方のマシンに追いつかれる原因になってしまいます。このあたりも気をつけなければいけないのが難しいところですね。


 2018年のデイトナの最後にサイドドラフトの応酬から、後ろにいた第三者に一気に追いつかれるシーンがありましたので動画をおいておきます。


https://youtu.be/8Zkg1FfGA5M?si=WklYmBQNik_G0V9o 


 88ボウマンVS18カイルに追いつく10ダニカと単独なのに一気に差を広げる22ロガーノの様子を見ると分かりやすいかなと思います。

バックドラフト


 写真のようにバンプドラフトをしてるわけでもないのに、隊列全体が速い現象。不思議ではないでしょうか?
 後ろのマシンは前のマシンからドラフティングを受けることで加速しやすいですが隊列の先頭は同じようには加速できません。
 ここで出てくるのがバックドラフト(リーディングドラフト)という現象です。通常マシンの後ろには画像のようなぐるぐるとした乱気流がドラッグ(抵抗)として生まれています。この部分にマシンが接近することで、このドラッグが軽減され、前を走るマシンも相乗効果を受けることが出来るというものです。
 後ろを走るマシンはほぼフロントダウンフォースがない状態になりますが、コーナーリングというコーナリングが無いのがデイトナなので、この影響を受けることはほぼありません。

 このあたりのドラフティング技術を認識していただくと、ドライバーたちが何を考えているのかがわかりやすくなるかなと思います。また、集団の中にいるとこれらが正常に作用するケースはそう多くなく、常に乱気流に揉まれながらのレースになります。更に、空気が前から当たりにくい状態であるがゆえ冷却にも気を使う必要が。この難しさも頭の片隅においてもらえると良いかなと思います。

  チームプレイ

 スーパースピードウェイでのレースで重要なのは、やはりチームプレイです。上述のピットのタイミングについても一つの例ですが、それ以上にグリーンラン中にチームで固まって走ることが大事だったりします。チーム内でドラフティングパックを維持できることができ、梯子を外されて順位を落とすリスクを減らすことができる点が大きなメリットです。
 また、チームで固まって前に出てしまえば全員で同じ動きをしてブロックできるため、後方のマシンは一位に出るのが相当厳しくなります。ビッグワン等アクシデントを避けて、どうチームで生き残るかもデイトナを勝つための大事な戦略となってきます。
 あとは、リスタートをワンツーで迎える時は、2番手側がわざと少し手を抜いたリスタートをし、先頭のマシンを前にいれることで前2台を固め、反対側の隊列からマシンを減らすことが叶います。終盤はこの戦略を取るチームも増えてきます。
 こんな感じで同チームメイトを使うかが勝負の鍵になってきます。

  ダブルイエローライン

 最後に紹介するのは、デイトナとタラデガの独自ルール。ダブルイエローラインです。NASCARでは数少ないトラックリミットルールに当たるもので、このラインを割ってのオーバーテイクは禁止されています。割ってしまった場合はペナルティとなり、レース最終ラップでやらかすと同一ラップ最後尾まで落とされてしまいます。
 また、割るのはもちろん、他のドライバーがイエローラインを割るように押し出すのもNGです。これをやると押し出した方にお咎めが行きます。NASCARがわからの判定が割と理不尽なことが多いのでできる限りイエローラインにはかかわらないようにしたいところですね。

 デイトナを見るうえで大事だなと思うのは大体この辺りですね。すべてを覚えておく必要はありませんが、頭の片隅にでもおいて頂けるとかなり見やすくなるかなと思います。
 
 本番までいよいよ一週間というところまで来ましたが、楽しみにしていただければと思います。それでは、次はプレビューでおあいしましょう。ありがとうございました。