ポスドクのビジネス感覚 | 海外ポスドクの就職活動日記

海外ポスドクの就職活動日記

高学歴・高年齢・海外… 
2009年、
3Kのハンディと不況にアグレッシブにチャレンジする
海外PDの新卒(?)就活記録

当初、僕は、新卒よりもずっと年上の変わった経歴で
就活をすることに肩身が狭く感じていました。

だけど、だんだんと
変わったキャリアであることはむしろ強みなのだ
と受けとめるようになった。

何かの説得力のある根拠があるというよりも、
僕の気持ちの持ち方の変化みたいなものなんだけどね。


印象に残った言葉に、合同セミナーで外資銀行の人事の方が
「私たちは多様性を尊重しています。なぜなら、様々な個性を持った人々が集まることが私たちの“強さ”になるからです。ですから、いろんな専門性や個性を持った人々に応募して欲しいと思っています。」
というものがあった。

よく企業のパンフレットには「個性」とか「倫理」とか、
学校などで聞き慣らされて陳腐にすら響く言葉が並んでいるけど、
就職活動の中で実際に現場の人々の言葉を聞くうちに、
それがとても実のある大切な言葉であることを実感するようになった。

そして僕は気づいた。
人と違うキャリアは肩身が狭いどころか、
それこそ僕の個性であり、強みなのだ、
と。

強みがあれば、弱みもある。
でもだからこそ、それぞれの強みに意味が生まれる。


年を食ってても、
専門以外のことには疎くても、
社会人の常識も知らなくても、
ポスドクには学生にはない経験がある!

欠点もあるだろう。
でも、ないものは仕方がない。あることが重要です。
学部卒では研究の奥深さにはあまり触れられない。
大学院に進んだからこそ経験できたことに“強み”を発見できるはず。
そして、それをビジネスとしての利点に繋げれば、
企業の担当者も、おっ!、と思わず唸るのではないでしょうか。

ポスドク+ビジネス=最強!
なんて妄想があってもいいのかも。(参照サイト


もちろん、
僕が今持っているものはそんなに大したものじゃない。
だけど、その“良さ”を説明するのは難しいことには思えなかった。

その点をもう少し強調しておきます。
専門家の価値観で見るとつまらなく素朴なものであっても
専門外の人は全く違う思いで対象を評価していることも少なくない。
僕はバイトで塾の先生をした経験があって、
子供達に数学や理科を教えたときにこのことを痛感した。
そして社会ではしばしば互いが専門家であり同時に素人でもあるのだから、
捉え方の違いに注意しておかないとすれ違いで
非生産な対話になりかねない。
何かを説明するときに大切なのは、
あなたがどう見てるかじゃなくて、相手がどう見るかだ。
(実は、こういう塾の先生の時の経験が面接の時に結構受けた。)

身の回りの素人の人に話を聞いてもらえば、
自分の専門を魅力的に伝える訓練になる。
あなたの研究の素敵な面を、素人の目で再発見できるんじゃないかな。

***
じゃ、それができたとして話を進めるね。

やっぱり、
アカデミアに生きてきたポスドクにとって
最も大きな壁の一つはビジネス感覚を身につけること、じゃないかな。

研究活動などを通して自分の潜在的な能力のアピールができたとして、
でも企業が知りたいのは
それがビジネス=お金になるか、のはず。

研究者と社会人の決定的な違いは
ビジネス感覚
だと就活の中で何度も感じた。


例えば、ある企業は資金調達で投資家から数十億円を集めて、
それを大々的に広告に投入して収益を増やしている。
なんでも、全国区のテレビでの広告料は時間帯にも依るけど
1回の15秒のCMで数百万円にもなるそうだ!

100回で数億円、
もっと広告は多いだろうからそれだけで調達した資金のかなりを使ってしまう。
凄い思い切りのよさ、リスクの取り方ではないか。
反響がなければお金を捨てるだけ。
形があるわけでもない広告に命運をかけて
利益に変えるベンチャービジネスの切迫感みたいなものを知った。

研究者が、「論文になるか?面白いか?斬新か?」と、
どちらかといえば抽象的な概念に価値を置くのに対して、
ビジネスマンは、「それが儲かるか?利益になるか?」
瞬間的に反応するのではないだろうか。
こういう身に染みついたものって、
無意識のうちに思考や行動の隅々にまで影響してしまうから厄介だ。

だから、僕は
・日経ビジネス(+オンライン)
・東洋経済
・ビジネス書
などを暇を見つけては読んで感覚に慣れようとした。
(ま、未だにあんまり慣れた気はしないんだけど。)

抽象的な学術書よりも、経営者のエッセイとか生の話の方が
感覚的に伝わる内容が豊富であるように思うことも多々ありました。
(ユニクロ創業者の柳井正『一勝九敗』とか)

まあ、就活は時間も限られているし、こういうのに
ちょっとだけ触れておくのも悪くないのではということで。


一方で、実際の面接とかだとビジネス感覚をアピールするのは
実はそれほど難しくないような気がした。
いうなれば、“気合い”だ。

この点で、以下のブログが僕には参考になったので紹介しておきます。
旧 バイオ博士院生の就活

僕の場合は「博士の専門性こそビジネスを強くする」なんて言えなかったけど、
でも「ビジネスとして貢献したい」と
枕詞くらいのノリで加えると何故か面接官の表情が変わったのはホント。

専門分野によってはもっと具体的にアピールできるのでは?
いいなぁ~。

***
僕なりの考えをまとめておくと、ポスドク・博士の場合、

・ビジネスで稼ぐために役立てたい、と(無理はしなくていいけど)何らかの形で明言する

・ビジネスは人との関わりで成立するのだから、他人と協力して仕事をした経験を強調する


などのアピールは絶対に忘れない方がよいと思う。
研究面に気を取られすぎると忘れがちなので。

あと、個人的な趣味として、
・新しいものを吸収するための柔軟さ、他の人々の話を聞く素直さ、人と信頼関係をつくる正直さ、
そういうことに気を遣いながら社員の方々と話すようにしたつもり。

そんなの当たり前だと感じるかもしれないけど、
程度の問題だから奥が深いっす。