信頼するから無茶も言う 仕事のパートナーとは ドラマ「ドクターⅩ」が語る、理想のパートナー像 | かなこの「恋はときどき」

かなこの「恋はときどき」

いまどき男女の恋愛事情と、ドラマや映画の批評を、ときどき更新します。

 仕事上のパートナーって?――ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子」(テレ朝、木曜21時~)11月21日放送の第6話は、信頼できるパートナーシップがテーマ。信頼できる相手だからこそ無茶も言う、というパートナーの条件が語られた。

 

 この回、珍しく大門(米倉涼子)と、麻酔科医の城之内(内田有紀)がいさかい合った。子供の患者に対する手術で、2回に分けるべきところを1度の手術でしてしまった大門に対し、城之内が無茶すぎると怒ったのだ。その後、子供同士の喧嘩のように互いに謝らずにこじれているところに、青年実業家・六角橋(平岡祐太)が城之内を見染めて食事に誘う。六角橋に元気がないと気遣われた城之内は「ちょっと喧嘩しちゃって」と答える。「彼氏ですか?」と聞かれて、「いえ…ビジネスパートナーです」と答える城之内。

 

 その六角橋は城之内に言う。「夢は叶えるためにあるんですよ」「城之内先生みたいに、優秀なビジネスパートナーがいるのが羨ましい」。ビジネスの世界は孤独だ、なかなか自分と志を一にしてくれるビジネスパートナーには巡り合わないものだ、と。

 

 その後、六角橋の手術は城之内に任され、城之内は大門ではなく元部長の海老名を執刀医に指名する。海老名は城之内を飲みに誘い、こう言う。「パートナー同士励まそうと思ってさ」。海老名の言う”パートナー”はいかにも軽い。行きつけというワンコインの飲み屋で、海老名は「なんで俺のこと選んでくれたの」と尋ねる。城之内は別に選んだわけじゃないのにという顔で「選んで……」と絶句した後で、「安心できるからですかね」と呟く。「大門さんと一緒だと不安で」。海老名は満面の笑みで、「俺が新たなパートナーとなる。俺が君を安心させてみせる。一緒に頑張ろう!」。

 

 帰宅した城之内は、晶(岸部一徳)に大門と喧嘩したことを指摘されて、「大門さん、自分が失敗しないからって無茶ばっかりなんだもの」と文句を言う。と、晶は言う。「そうね。でも無茶は、信頼している相手にしか言わないものよ」

 

 手術を前にした六角橋は、今の夢は生きることという。大門が「夢、叶うよ。執刀医はともかく、優秀な麻酔科医がいるから」と声を掛けると、六角橋は笑って言う。「やっぱり。城之内先生のビジネスパートナーってあなたのことだったんですね」「城之内先生があなたに手術をさせないのは、あなたが優秀すぎるからですよ」「僕にも経験があるから分かる。ビジネスのパートナーシップって難しいんです」。だが大門は手術はビジネスじゃないと否定する。「ビジネスパートナーじゃないよ」「私にとって手術は、趣味と特技なので」

 

 というふうに、この回は、パートナーシップについて、いくつかの定義が示された。「信頼している相手にしか無茶は言わない」。そういう無茶を言える相手こそが、本当のパートナーであること。だがその信頼は、時には相手への過度な甘えや期待につながり、期待された側としては、重すぎるがゆえにパートナーを解消したくなることもある。想定内の期待だけされる「安心できる」関係に逃げたくなることもある。自分と同じ程度の優秀さでないと組むことは難しいが、かといって自分以上に優秀な人と組み続けるのも骨が折れる。「ビジネスのパートナーシップは難しい」、ことに「優秀すぎる相手だと、あえて組む相手から外すこともある」というわけだ。

 

 ドラマでは結局、城之内は六角橋と組むのを断り、大門と仲直りする。城之内がきついと思っている時、それと同等以上に大門もまたきついはずなのだ。けれど大門が妥協を許さないのは、患者のため。そういう共通目標を目指して、組める信頼関係があるなんて、大門と城之内はなんと理想的な仕事上のパートナーだろう。こんなふうに信頼できて、何でも言い合えるような相手と出会えて、一緒に仕事ができるなんて、なかなか羨ましい。

(2019・11・26、元沢賀南子執筆)