地上波テレビ局の開票速報に飽きた! 結果はすぐ出るのに長々と騒ぎすぎ&各局とも横並びで同工異曲 | かなこの「恋はときどき」

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 地上波民放テレビ局の参院選の選挙報道が「答え合わせ占い」「後の祭り」的だ、という指摘は前項でした。本項では、開票日当夜の開票速報が、各局「横並び」感が前よりひどくなっていないか、という点について考えてみる。

 

国勢選挙の開票日は、もちろん選挙速報が、最優先して報道すべきニュースなのは間違いない。だからNHK始め民放各局も、地上波の責任として選挙結果を伝える開票速報に時間と力を入れるのは分かる。分かるが、ただ、問題はその中身だ。民放各局はどこもみな似たり寄ったりだった。午後から夕方の情報バラエティー番組と夜23時台前後のニュース番組のキャスターを複数人揃えて、午後7時50分台から番組を始め、8時の投票締め切り・開票開始と同時に、「当打ち」(当選や当選確実の速報を「打つ」こと)を続々と始めた。8時ちょうどの段階で、すでに各局の開票速報番組の画面には「自民51」「立憲15」などと数字が並び、中には「れいわ(れいわ新選組)2」「N国(NHKから国民を守る党)1」など、今回が国政選挙初挑戦の小政党の数字を早々に打つ局もあった。

 

具体的には、▽日テレは「Zero選挙」、ふだんは23時台の「ニュースzero」の有働由美子キャスターと嵐の櫻井翔がメーン司会者。ゲストには落合陽一ら。▽TBSは「Nスタ×NEW23」、Nスタから井上貴博とホラン千秋、23から小川彩佳をキャスターに迎えて、23レギュラーの星浩も解説で加わった。▽フジは「Live選挙サンデー」として、宮根誠司と加藤綾子をメーン司会に据え、ゲストは石原良純、古市憲寿ら。▽テレ朝は毎度おなじみ、報道ステーションを「選挙ステーション」に模様替えし、いつもの司会者の局アナ陣(富川悠太、徳永有美、小木逸平、竹内由恵、徳永のみフリーキャスター)で「省エネ」に番組を制作。▽テレ東は池上彰の冠番組「池上彰の参院選」で、局アナでふだんはWBS(ワールドビジネスサテライト)の看板キャスターを務める大江麻理子がサブに。以前は新鮮だったコジルリこと小島瑠璃子の突撃取材は今回もあり、ゲストはカンニング竹山ら。

 

 NHKこそ、翌日早朝まで終始、得票の行方と選挙区や政党報道をメーンに、時折政党代表のインタビューを交えたり解説委員の解説を加えたりしながら、従来型の選挙速報をしていた。だが民放はいまや、出口調査の正確度も上がり、開票が始まった午後8時直後の一斉に「当打ち」をする瞬間が一番盛り上がる。結果を見て勝敗が決まったら、視聴者の盛り上がりも終わりだ。(「勝敗」とは、いかに早く「当打ち」ができたかで決まる。出口調査や事前の世論調査の結果が重要なため、事前にどれだけ準備にかけていたかが優劣を決める。しかも日テレは読売新聞と、テレ朝は朝日新聞と、TBSは毎日新聞と、フジは産経新聞と、テレ東は日経新聞と連携して「票読み」をするため、大抵は新聞社側が大規模な下準備をすることになり、「当打ち」勝負はそのまま新聞社間の競争の結果である。主に朝日・読売・毎日の闘いだ)。

 

最初の瞬間の盛り上がり&各局の勝敗がついた後は、開票結果そのものはだらだらと出続ける。じわじわ決まる比例区が全部開く翌日早朝まで、ぽつぽつと候補者名が決まっていく。大勢が判明するのも早く、一部の接戦区が決着を見るまでの間、各局は速報番組を続けるため、場を「つなぐ」特集をする。工夫を凝らしてはいたのだろうが、どこも五十歩百歩、異口同音うるさい。いじりすぎ。密着してインタビューして、みんな同じ。(テレ東に至っては政治家によるカラオケ合戦と化していた。ひどすぎないか?)だからチャンネルを変えても飽きる。しかも、(こう言っては申しわけないが)次々と登場する当選者たちは、ほとんどが知らない顔のおっさんばかり。それもかなりな「悪人顔」(偏見です)の、腹黒そうに見える(失礼!)おっさんばかりだ。なんでそんなに4時間以上も、見たこともないおっさんたちの顔ばかり見せるのか、そんな選挙番組では視聴者は飽きてしまう。

 

 その点、早々に選挙報道を離脱したテレ朝の編成局の判断は正しかったのではないか。視聴率的にも数字を持って行くのに成功したのではないだろうか。一番盛り上がる、8時前後こそ「選挙ステーション」で開票速報を報じたものの、その後は開いていく票数だけを画面の横・下で表示し、メーンは世界水泳のライブ放送。水泳が終わってようやく「報ステ」に戻したものの、それも10時台で終えると、11時からは今度は「全英オープンゴルフ最終日」のライブに切り替えた。ゴルフが終わってようやく、早朝3時過ぎに、最終結果が出たころの選挙速報の続きに戻ってくる、という巧妙な番組編成で、視聴者はこの方が飽きずに見続けられたのではないだろうか。(この戦略に倣うならば、例えば、放送休止にしたTBS「ノーサイド・ゲーム」や日テレ「あなたの番です」などの連ドラも、ちゃんと放送して、横や下にテロップで開票速報の数字だけを表示し続けても良かったのではないか。そうしてドラマを挟んだ方が、他局の選挙報道に飽きた視聴者をごっそり捕まえられたのではないのか。ドラマを休んでまで放送するほど中身のあった選挙番組だったようには、あまり思えない。)

 

 だがテレ朝以外の各局は、けっこう深夜・早朝まで選挙番組を続けていた。テレ東が離脱したのが12時前でスポーツ番組に、その後フジが1時20分過ぎまで粘って音楽番組になったが、日テレとTBSは深夜1時を過ぎても粘って選挙関連番組を続けていた。日テレは、有働由美子が落合陽一ら「雛壇」に迎えたゲストらに一生懸命深夜のトークを振り、TBS(小川アナ&星浩)は政治家を招いて真面目に議論していた。NHKは、あくまで情勢を伝えるだけで朝まで続けていた。だが視聴者はみな、そんなに選挙報道に食いついたのだろうか?

 

筆者などは今回、選挙速報が始まってすぐに、もう十分と、うんざりしてしまった。どの局もみんな一色なうえ、過剰に騒ぎすぎだからだ。ふだんならアニメや映画などで「独自の闘い」をしてくれるテレ東ですら、池上彰を起用しての(しかも“大暴投”の)選挙報道。ゴルフに興味のない筆者は、テレ朝のスポーツにも見飽きたら、見るものがなくて、ついNHK教育テレビ(Eテレ)を見てしまい、ほっこり癒された。もちろん選挙はお祭りなので、騒ぐテレビ局の製作者側の気持ちも分かる。分かるが、でも見ているこちら側は「冷めている」、その温度差に、なにかデジャブ(既視感)がある――と思って、はたと気付いた。令和元旦を迎える、改元の夜のはしゃぎぶりとそっくり同じだ、と思い出したのだ。

 

 こんな横一線は、視聴者の好みを考えた結果ではなく、それがお祭りだからと思考停止になって、テレビ局同士の勝敗にこだわって番組を考えたからではないか。そんなことでは、地上波は早晩、間違いなく視聴者にそっぽを向かれるだろう。インターネット放送など代替手段が増えて来た今、「もう地上波なんて見なくていい」「見るところがない」と感じてしまう視聴者が大多数になる日も、そう遠くはないのではないか?と、老婆心ながら心配になってしまった。選挙報道を見ていて、そんなことまで考えてしまった、筆者である。

(2019・7・23、元沢賀南子執筆)