律はブックバンドでしょ! NHK「小道具力」劣化問題・下 近過去ドラマは難しい 朝ドラで違和感 | かなこの「恋はときどき」

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 ドラマにおける小道具・持ち道具の「時代考証」が、NHKですら合っていない問題。前稿では大河ドラマですら、小道具力が落ちていることを憂えた。だが、時代考証は、すごく昔の歴史物よりも、昭和時代や平成の初めごろなど「近過去」を舞台にしたドラマの方が、より難しいとも言われる。現代と地続きなだけに差異が微妙で間違いやすいうえ、視聴者も当時を覚えているので「間違い探し」されてしまうからだ。

 

その意味で、頑張っているものの時折「ぼろ」が出てしまうのが、朝ドラだ。特に最近は昭和~平成の物語が多いだけに、ちょっとしたところでミスが目についてしまう。

 

例えば、今、放送中の「半分、青い。」。うーん、惜しい!と思ったのは、例えば、律(佐藤健)の学生生活の場面だ。一つは、律が持っていた「かばん」。リュックサックがこんなに学生に浸透したのはここ数年のことで、90年代の学生たちは「ブックバンド」=写真参照=で本をまとめて持ち歩くのがおしゃれだった。理系の男子もみな、こういうブックバンドで教科書や参考書をまとめていたものだ。だから、律にはブックバンドを肩にかけたり、小脇に抱えたりしてほしかった。

 

 

また、律とさやがキャンパスで話している場面で、背景に他の学生たちが歩いているのが写っていた。彼らは、おそらく現代の学生にエキストラで出てもらったのだろう。みながみな、リュック姿だったのが、当時を知る世代としてはすごい違和感だった。「何か違うなあ~」と考え始め、「ウオーリーを探せ」状態。答えを考えて、「ああ!リュックじゃない!あのころはリュックは少数派だった!」と思い至るのだ。

 

こんなふうに、記憶に残っているだけに、ちょっとした「違い」が妙に気になってしまうのが、近過去を舞台にした作品の宿命だ。そこは制作陣には、丁寧で地道な作業をする努力が求められる。当時の映像資料などで風俗やファッション、習慣などを洗い出すしかない。

 

ちなみに、「ひよっこ」でも気になったものがあった。それは「お弁当袋」。主人公のみね子(有村架純)が子供時代、弁当を入れて持って行くのに、現代のOLがよく持つランチバッグを使っていた。持ち手が短く、横長のミニトートだ。いやいや、違いますって! そんなおしゃれなランチバッグは、ついこの10年ほどの流行だ。当時のお弁当袋は、口ひもを絞って使う巾着型の、いわゆる「ずた袋」だったはずだ。

 

と、まあ、「自分がその当時に生きていた人」は、風俗習慣の間違いこそ、「ん?」と気づいてしまうもの。その難しい時代に挑戦する演出陣には拍手を送りたい。でも、視聴者の夢が覚めないよう、当時の風俗そのものをなるべくその通りに再現するよう頑張ってほしい。

(この項終わり)(2018・7・30、元沢賀南子執筆)