◎「はづみ(弾み)」(動詞)
「はずつみ(弭摘み)」。「はず(弭)」は弓のそれ(「はず(弭・筈)」の項・10月2日)であり、弓の弦をかける部分ですが、その弭(はず)を「つむ(摘む)」とは、弭(はず)を指で摘(つま)み、弓を固定したまま矢を射る際弦を引く方向へ引き、ある瞬間ちぎれたように離すこと。それにより弓は(弦は)振動する。その弓(弦)の運動が「はづみ(弾み)」。
「浪分の曲とは高くけあげつつはづむをおひてける(高く蹴上げつつ弾むを追いて蹴る)をいふ也」(『蹴鞠百首和歌』)。
「『よく縢(かが)つたねへ。これは板毬(いたまり)かエ』『いゝへ。畳の上でよヲくはづむよ』」(『浮世風呂』:「板毬(いたまり)」は板のような堅いものの上でよく弾む毬。昔の毬(まり)は糸を巻き、かがり、作った)。
「『馬の脚の及ばうほどは手綱をくれて歩ませよ。はづまば掻(か)い操(く)つて泳がせよ』」(『平家物語』:馬が、水中で溺れそうになり、跳ね浮くような状態になるということでしょう)。
「祝儀もはづんだ(跳ね上がるように多額だった)」。
「はつら(端面)」の動詞化。部分表面域を現象化させること。「はつら(端面)」をする、のような表現である。表面を薄く削ったり・切ったり、皮を剥いだりする。名詞で「はつり」と言った場合、木などを削った木片(焚きつけなどにする)などを意味しますが、絹その他の布の場合、布をほぐし糸として使うものも意味する。多く他動表現ですが、自動表現もあり、自動表現の場合は、表面がくずれる、のような意味になる。自動表現は一般に「はつれ(解れ)」。
「大和の国に一人の壮夫(をのこ)あり……天骨(ひととなり)仁ならず。生命を殺すことを喜(この)む。その人菟を捕りて皮を剥(はつ)りて野に放つ…」(『日本霊異記』)。
「もみちはは(紅葉葉は) みねのあらしに(峰の嵐に) はつられて おりとめかたき(織りとめ) にしきなりけり(錦なりけり)」(『長承三(1134)年 中宮亮顕輔家歌合』)。
「枯松に登り、脱(ハツ)りて落ち死ぬ」(『日本霊異記』:これは自動表現。松の木の表面のような状態であったものが、剥がれ崩れ落ちるように落ちた)。
「はつり(削り)」の自動表現。表面の構成が崩れる印象の動態になることであり、布なら「ほつれ(解れ)」に意味は似る。
「ふち衣(藤衣) はつるるいとは(はつるる糸は) わひ人の(侘人の) 涙の玉の を(緒)とそなりける」(『古今和歌集』)。
「板屋形の車の、輪(わ)缺(か)けたるに…………はつれたる伊豫簾(いよすだれ)かけて…」(『宇津保物語』)。