◎「ばつ(×)」
記号「×」を言う「ばつ」。「バチフウ(桴封)」。「桴」は音(オン)は「フ」。意味は(ここでは和太鼓を叩く)ばち。この「ばち」という語は「撥」の音(オン)。「撥(ハツ。バチ)」は弦楽器の弦を弾くものですが、習慣的に、日本では、たいこを叩くものも「撥(バチ)」と言われている。「桴(フ)」は中国語で太鼓を叩くものを意味する字。「封(フウ)」は、ここでは塞(ふさ)ぐこと。「バチフウ(桴封)→ばつ」とは、和太鼓を打つ撥(ばち)を交差させなにごとかを封じ、禁止しているかのような印象であるということ。「×」の記号がそのような印象だということです。ついた記号を「ばつてん(×点)→ばってん」とも言う。
◎「ばつ」
「ばつが悪い」などの「ばつ」。「ばツウ(場通)」。情況を進行することを意味する。
「『オイ、表(おもて)を締(し)めねえ、人が見るとばつがわりいからよ…』」(『真景累ケ淵』)。
「兎角(とかく)女がばつでもいふと(ほどをいふこと)すぐに乗地の人力車」(『西洋道中膝栗毛』:情況が抵抗なくうまくすすむようなことを言う)。
「石川夫人が何角(なにか)と口軽くばつをあはせて、あのお糸とか云ふ娘と四方山(よもやま)の問答して居たので、幾何(いくら)か苦難を免れ…」(『思出の軒』(徳富蘆花))。