◎「はぢかはし」(動詞)
「はぢかはし(恥ぢ交はし)」。恥が相互的に交流することですが、「言(い)ひ交(か)はし」は言うことで交差関係になり、「はぢかはし(恥ぢ交はし)」は恥ぢることで交差関係になる。AはBに対し恥ずかしい思いがし気が臆し遠慮し、BもAに対し恥ずかしい思いがし気が臆し遠慮している。それが「はぢかはし(恥ぢ交はし)」。これはお互いに気になりはじめた男女に関して言い始めたことかも知れない。お互い、気になってはいるのだが、恥ずかしく、口もきけない。
「をとこも女も恥ぢかはしてありけれど、をとこはこの女をこそ得めと思ふ。女はこのをとこをと思ひつゝ…」(『伊勢物語』)。
「ありがたきもの(めったにないもの)…………同じ所に住む人の、かたみに(お互いに)恥ぢかはし…」(『枕草子』)。
◎「はぢかはし」(形シク)
「はぢかひあし(恥交ひ悪し)」。この「かひ(交ひ)」は「恨みをかふ」などの「かひ(交ひ)」です。つまり、恥が感じられ気持ちが否定的になる心情が表現される。
「うつる月日も重なりて。おとなしく恥ぢがはしく。たがひに今はなりにけり」(「謡曲」『井筒』)。