◎「はたこ」

「はたこ(端(傍)子)」。傍(かたは)らの子、見物人、傍観者、(当事者ではない)一般人。行事その他で見物人になっている人々。「こ(子)」という表現は、自分たちは皇子に仕える者、という誇りをもって、一般の人をそう表現したのでしょう。万193にある表現ですが、一般的とも思われない。

「はたこ(八多篭)らが夜昼といはず行く道を我れはことごと宮道(みやぢ)にぞする」(万193)。

 

◎「はたご(旅籠)」

「はたご(端籠)」。「はた(端)」は近傍や近傍にある何かも意味しますが、「はたご(端籠)」は近傍にある籠(かご)。常に身近においている籠。これは当初は旅行(遠方へ出掛けること)の際、馬の飼料を入れたようです(振り分け荷物のように馬に負わせた)。これがやがて、旅の食料、旅での食事、それができ宿泊もする旅館、も意味するようになる。旅館は「はたごや(旅籠屋)」ともいう。

「籠 …和名古俗用旅籠二字云波太古 今案所出末詳 竹器也」(『和名類聚鈔』「器皿部」)。

「篼 漢語抄云波太古 俗用旅籠二字 飼馬籠也」(『和名類聚鈔』「調度部」の行旅具)。

「旅籠 ハタゴ 旅食」(『(天正本)節用集』:旅での食べ物)。

「當国品川の驛なる旅籠(はたご)する扇屋といふ者…」(『折たく柴の記』:江戸時代の宿泊業)。