◎「はだ(甚)」
「はてな(果て無)」。際限無く、の意。
「命あらば逢ふこともあらむわがゆゑにはだな(波太奈)思ひそ命だに経ば」(万3745:際限なく、あまり思い詰めて、思わないで)。
「多胡(たこ)の崎 木(こ)の暗茂(くれしげに) ほととぎす 来鳴(きな)き響(とよ)めば はだ(波太)恋ひめやも」(万4051)。
◎「はだ(肌)」
「はとうは(はと上)」。「は」は感づき感覚的に何かを提示する(提示感がある)。「と」は思念的な確認が起こる→「おとな(大人)」や「おと(音)」の項参照。「うは(上)」は「うへ(上)」の語尾A音化であり、表面、表面たる現れを表現する→「うへ(上)」の項。すなわち「はだ(肌)」は、感覚的に受容される何かの表面。この感覚的な受容感がこの「はだ(肌)」という言葉を人体の表面表現へと向かわせている。しかし、人体表面のみを意味するわけでもない。「山はだ」。
「片泣(かたな)きに 我(わ)が泣(な)く妻(つま) 今夜(こぞ)こそ 安(やす)く膚(泮娜はだ:)触(ふ)れ」(『日本書紀』歌謡69)。
「…丸邇坂(わにさ)の土(に)を 初土(はつに)は 膚(はだ:波陀)赤(あか)らけみ…」(『古事記』歌謡43)。
「高麗(こま)の紙の、肌(はだ)こまかに、なごうなつかしきが…」(『源氏物語』)。