◎「はた(畑)」
「ふあては(生当て端)」。「ふ(生)」は発生を表現する(「しばふ(芝生)」など。→「ふ(生)」の項)。「あて(当て)」は全的に同動させることを表現し、それは推量の同動も意味し、推量の同動は期待や思惑、見込みといった意味になる(→「あてにする」「あてがはずれる」)。「は(端)」は部分域であり、それは部分として独立している。この場合は土地のそれ。ある土地の部分域が「ふ(生)」に、発生に、当てられそれが期待されあてにされている。その土地域が「ふあては(生当て端)→はた」。何の発生かといえば、それは植物であり、ほぼすべて食用植物。「はたけ(畑)」(その項)という語もある。「はた」は「はたけ」という語にくらべれば、定在性が弱い。
「爲陸田種子 波太津毛乃止須(はたつものとす)」(『日本紀私記』:『日本紀私記』は奈良時代から平安時代初期にかけ朝廷で行われていた『日本書紀』の購読記録。ここでは『日本書紀』神代上にある「爲陸田種子」の読みが説明されているわけです。「はたつもの」は「はたけつもの」とも言う。「つ」は所属する助詞)。
「疁 ハタ ヤキハタ」(『類聚名義抄』:「疁(リュウ)」は、焼き畑、を意味しますが、これが「はた」でもあるのは、焼くからではなく、その定在性が弱いからでしょう)。
◎「はた(二十)」
「ふたそ(二十)」を「はた(織物)」と表現した語。経糸(たていと)と横糸(よこいと)の二つの「そ(麻)」で織物をなす、ということ。「そ(麻)」は、あさ(麻)、その糸、を意味する(→その項)。数の20(二十)を意味する。これによる「はたち」という語がある。
「天下(あめのした)大(おほ)きに平(たひらか)なり。二十餘年(はたとせあまり)ありて事(こと)無(な)し」(『日本書紀』)。
「すへて 千うたはたまき なづけてこきむわかしふといふ(すべて 千歌二十巻 名づけて古今和歌集と云ふ)」(『古今和歌集』序)。
「…と指(および)をかがめて、「十(とを)、二十(はた)、三十(みそ)、四十(よそ)」などかぞふるさま…」(『源氏物語』)。
「廿七 ハタナナ」(『類聚名義抄』)。