「のり(法・典・憲・範・制・程・度・倫・規・則・矩・準)」の語源
動詞「のり(告り)」の連用形名詞化。→「のり(告り・罵り)」の項。すべてを内包し普遍化していく言語影響・言語作用たること。すべてを内包し時空普遍化していく言語影響・言語作用たることが「のり(法・典・憲・範…)」なのであって、誰かがなにかを言えば、あるいは、何らかの機関がなにかを決定したり議決したりすれば、それが「のり(法・典・憲・範…)」というわけではない。仏教では教えが「みのり(御法)」とも言われ、「仏道」が「のりのみち(法の道)」と言われたりもする。「みちのり(道程)」はA点からB点までの経過点として普遍化していること(その長さ、距離、という意味でも言われる)。建築用語に「内法(うちのり)」「外法(そとのり)」という語がある。壁の内側の長さ、広さ、外側の長さ、広さ、ということですが、家屋は人の生活を環境的に規定し家庭としての公性を規定するところから「のり」となる。公定的にあるべき物の大きさなども「のり」になる。
「商變(あきがはり)領(し)らすとの御法(みのり)あらばこそ我が下衣(したごろも)反(かへ)し賜(たば)らめ」(万3809:「商變(変)」は他の読みもなされていますが、「あきがはり」でしょう。交換合意が、合意が成立しているにもかかわらず、変化すること。「領(し)らし」は「領(し)り」の尊敬表現。意味は、世を治めること。約束したのにそれを守らないことを世の法とするようなそんな法があらばこそ、下衣をお返しになったのでしょうけれど…(そんな法は人にはない)、と言っている(つまり、約束したのに、男が裏切った))。
「其(そ)の宮(みや)を造(つく)る制(のり)は、柱(はしら)は高(たか)く大(ふと)し。板(いた)は廣(ひろ)く厚(あつ)くせむ」(『日本書紀』)。
「今(いま)より以後(のち)、是(こ)の土物(はに)を以(も)て生人(いきたるひと)に更易(か)へて陵墓(みささぎ)に樹(た)てて、後葉(のちのよ)の法則(のり)とせむ」(『日本書紀』)。
「兄(このかみ)友(うつくし)び、弟(おとと)恭(ゐやま)ふは、不易(つね)の典(のり)なり」(『日本書紀』)。
「僧尼(ほふしあま)、未(いま)だ法律(のり)を習(なら)はぬを以(も)て、輙(たやすく)犯惡逆(あくぎやく)なることを犯(をか)す」(『日本書紀』)。
「人(ひと)の身(み)は得(え)難(がた)くあれば乃利(のり)の爲(た)の因縁(よすが)となれり努(つと)め大衆(もろもろ)進(すす)め大衆(もろもろ)」(『仏足石歌』:この「のり」は仏の道)。
「大(おほき)さ五升ばかり也。これをたくみにつけて花入るうつはにせんとすれば其のりにあたらず」(「俳諧」『七柏集』「四山」:この「のり」は(花入れたる器の)あるべき大きさ)。