◎「にひす(新巣)」
「にひ(新)」「す(巣)」(2023年2月21日)はそれぞれその項。これは『古事記』にある表現ですが、神の住まいが「す」と表現されている。「す(巣)」は、後世では、動物や虫の棲処(すみか)を意味しますが、原意的にはそれは人の生活施設を意味する言葉として生まれたものでしょう。
「是(こ)の我(わ)が燧(き)れる火(ひ)は、高天原(たかまのはら)には、神產巢日(かむむすひ)の御祖命(みおやのみこと)の、登陀流(とだる)天(あめ)の新巢(にひす)の凝烟(すす) 訓凝姻云州須 の、八拳(やつか)垂(た)る摩弖(まで)燒(た)き擧(あ)げ 麻弖二字以音 …」(『古事記』:「とだる」はその項)。

◎「にひなへ(新嘗)」
「にひなあへ(新な和へ)」。新(にひ)なる和(あ)へ、の意。「あへ(合へ)」は「饗(あ)へ」でもある。未経験の新鮮な「和へ(あへ)」ということですが、具体的には、その年になった穀物などを供え、自らも食う。何と「和(あ)へ」―融和し一体化、するのかというと、それは自然や神です。同意といってよい語に「にひなめ」がある。
「凡践祚(アメノシタシロシメス)大嘗(オホムベノ)祭為大祀 祈年(トシゴヒ) 月次(ツキナミ) 神嘗(カムニヘ) 新嘗(ニヒナヘ) 賀茂等祭…」(『延喜式』巻第一 神祇一 四時祭)。
「今日方新嘗(ニヒナヘ)ノ猶良比(ナホラヒ)ノ豊ノ明(アカリ)聞コシメス日ニ在(アリ)」(『続日本紀』)。
◎「にひなめ(新嘗)」
「にひなみあへ(新な御和へ)」。「にひなへ(新嘗)」をさらに敬いをもって言った表現。「にひなへ(新嘗)」にかんしてはその項。
「新甞 ニヒナメ」(『類聚名義抄』)。
「新甞會事 ニヒナメエノコト …………此節會ヲ ニイナメマツリト申也。今年ノ初稲ヲ神々ニ供シ奉ラセ給ナルベシ」(『壒嚢(アイナウ)鈔』)。