◎「にぎにぎし(賑賑し)」(形シク)
「にぎ(賑)」はその項(3月26日)。人々が往来、交流し、豊かな印象であること。
「扨(さて)も扨(さて)も大参りと見えてにぎにぎしい事じや」(「狂言」『川上』)。
「康頼など云さるかう(猿楽)くるひ物(者)などにぎにぎとめしつかひて…」(「」『愚管抄』:これは「にぎにぎと(賑賑と)」)。

◎「にぎはひ(賑はひ)」(動詞)
「にぎはひ(賑這ひ)」。「にぎ(賑)」はその項。人々が往来、交流し、豊かな印象であること。「はひ(這ひ)」は情況感が動態感をもって作用する(その項)。つまり、「にぎはひ(賑這ひ・賑はひ)」は、人々が往来、交流し、豊かな情況動態になることである。「にぎはへ(賑はへ)」という他動表現もあり、これは、歓待しもてなす、のような意味になる。
「是(こ)の時(とき)に當(あた)りて、風雨(かぜあめ)時(とき)に順(したが)ひて、五穀(いつつのたなつもの)成熟(みの)れり、人民(おほみたから)富(と)み饒(にぎは)ひ、天下(あめのした)太平(たひらか)なり」 (『日本書紀』)。
「是(ここ)に、疫病(えのやまひ)始(はじ)めて息(や)みて、國內(くにのうち)漸(やうやく)謐(しづま)りぬ。五穀(いつつのたなつもの)既(すで)に成(みの)りて、百姓(おほみたから)饒(にぎは)ひぬ」(『日本書紀』)。
「…また、その辺(あたり)には小家ども多く出で来て里も賑ひけり」(『宇治拾遺物語』)。
「蝦夷(えみし)二百餘(ふたももあまり)闕(みかど)に詣(まを)でて朝獻(ものたてまつ)る。饗賜(あへたま)ひて贍給(にぎはへたま)ふ」(『日本書紀』:これは「にぎはへ(賑はへ)」)。

◎「にぎやか(賑やか)」
「にぎ(賑)」はその項。「やか」は、「さはやか(爽やか)」その他にあるそれ(→「やか」の項)。人々が往来、交流し、豊かな印象であることへの感銘を表現する。
「はるかに見やるに、興福寺の方には、人多く居こぞりて、いみじうにぎやかなり。東大寺の方には、人少(ずく)なにて、ものさびしき様に見えければ…」(『発心集)。
「『やれ扨(さて)、市(いち)も嬉(うれ)しいことぢやわ。賑(にぎや)かさうにござる』」(『狂言記』「柿売」)。