◎「なめづり(舐り)」(動詞)
「なめつすすり(嘗め唾啜り)」。嘗(な)め(→「なめ(舐め・嘗め)」の項・2月25日)唾(つ:唾液)を啜(すす)るような動態になること。
「…七牛聞之,甞舌飲唾………甞 ナメツリ」(『(校本)日本霊異記』中巻第五訓釈・国立国会図書館にあるもの)。
「啜 ナメツル」(『色葉字類抄』)。
「舌なめづり」。
◎「なめり」
「ならむふめり(ならむ踏めり)」。「ら」と「ふ」の子音が退行化している。「ならむ」は「~にあらむ」。「ふめり(踏めり)」(→「めり(助動)」の項)は「ふみ(踏み)」に助動詞「り」がついたものであり、この「ふみ(踏み)」は思考・考察の実践であり(「値踏み」の「ふみ(踏み)」)、そう判断できる、の意。つまり「~にあらむ踏めり→~ならむ踏めり→~なめり」は、~であろうと判断できる、の意。
この語は一般に「なるめり(あるいは、なりめり)」と解されている。「る(り)」の子音が退行化し、なんめり→なめり、になったという。これは、「~だ。そう判断できる」のような表現であり、相当に強い確定的な表現。「ならむふめり(ならむ踏めり)→なめり」は、「~と思われる」のような、それよりも弱い確定的表現。「~なめり」と言う語の現実の用いられ方は後者のほうが良いと思われる。
「(かぐや姫は)子となり給ふべき人なめり」(『竹取物語』)。
「坊にも、ようせずは、この御子の居たまふべきなめり、と一の皇子の女御は思し疑へり」(『源氏物語』:ここでの「坊(バウ)」は春宮坊(トウグウバウ)であり、東宮(皇太子)の部屋(居所)、というような意味なのだろう。全体で言っていることは、この子は、将来、東宮になるのでは…ということ。「ようせずは」は、良くせずは(悪くすると)、ということか)。
「悪ろびたることども出でくるわざなめれば…」(『源氏物語』:いろいろと良くないことも出て来ると思われるので…)。