◎「なひ(綯ひ)」(動詞)
「なは(縄)」(その項・1月27日)の動詞化。縄(なは)を成形すること。語源としては、活用語尾のH音は努力を表現しつつ、「ぬひははひ(縫ひ端端ひ)」ということになり、「なひ(綯ひ)」は縄(なは)を完成させる努力を表現し、「なはをなふ(縄を綯ふ)」は、縄を完成させ、と同じような意味になる。
「童女合繩(童女の繩(ナヘル)を合せ)。如前作法。繋作七結」(『蘇悉地羯囉經』巻下 圓備成就品第三十四(宮内庁宋版) 寛弘五(1008)年点)。
「索 …ナハ…………ナフ」「搓 …………ヨル イトヨル…ナフ」 (『類聚名義抄』)。
◎「なひとやはばに」
これは『日本書紀』(雄略天皇元年春三月)に「此古語未詳」と書かれているものであるが(つまり、『日本書紀』編集時にすでに語義未詳の古語だった)、「なひとやはばに(汝人家幅に)」。「なひと(汝人)」は、お前という人、の意。「やはば(家幅)」は家の幅。人間の幅(大きさ・さらには質)は家の幅で決まるということ。この場合の「や(家:いへ)」は血を受け継いでいるものたち、血を受け継いでいること、を象徴する。つまり、「なひとやはばに」は後世の諺で言えば「血は争えない」ということ。
「『麗(かほよ)きかな、女子(をみなご)。古人(いにしへのひと)云(い)へること有(あ)り。娜毗騰耶皤麼珥(なひとやはばに) 此(こ)の古語(ふること)未(いま)だ詳(つばひらか)ならず …』」(『日本書紀』)。