◎「てこずり」(動詞)

「てコツすり(手骨擦り)」。この場合の「て(手)」は方法を意味する(→「て(手)」の項)。「コツ(骨)」は、「骨」の音(オン)であり、原意は「ほね(骨)」ですが、ものごとの骨(ほね)、それがなくなるとそれではなくなること、それによってそのものごととなしうること、といった意味で言われる。「目玉焼きをきれいに作るコツは…」。「てコツすり(手骨擦り)→てこずり」は、ものごとの方法やそのコツをすり減らすような努力をすること。つまり、対応や処理にひどく苦労すること。

「てこずる 窮困 コマル事をテコズルといふ語流行す…」(『半日閑話』:安永五(1776)年の記事)。

「『…剃刀を持つた手が棒のやうになつて、櫛へ移る時手小摺り切るはナ』」(「滑稽本」『浮世床』)。

 

◎「てこね」(動詞)

「てこ」は、「テンころ(転ころ)」。「テン」は「転(轉)」の音(オン)であり、『説文』に「運也」とされるような字。回り移動する印象がある。「ころ」はそうした動態を表現する擬態。「テンころ(転ころ)→てこ」は、「こてん(ころ転)」のような、転(ころ)がり倒れるような動態を表現し、「てこね」はその動詞化。これは人が死んだことを尊重感なく表現する俗語。

「四方山(よもやま)の咄しの次手(ついで)に、いやこなたの御内儀様は、と尋ねけるに。……旦那にがい貌(かほ)して、それはてこねた、といはれける」(「浮世草子」『好色五人女』)。