◎「たち(質)」
「とはち(永遠血)」。「ち(血)」は体質、意味発展し、性質、を意味する。永遠の性質、とは、もって生まれた体質・性質、のような意。
「銭のかずよみて、袂の中でにぎりつめて、……あたたかなをもてくるたちなれば、万てあらく」(「浮世草子」『好色具合』(1687年))。
「日焼けするとすぐに赤くなるたちなの」。「たちの悪い悪戯(いたづら)」。
◎「たち(達)」
「たつゐゐ(立つ居居)」。動詞「たち(立ち)」は発生・現れを表現する。「ゐゐ(居居)」の連音は複数を表現する。たとえば、女(をんな)立(た)つ居居(ゐゐ)→女が立つ、女という概念が発生する、複数存在、は複数の女を意味する。複数表現に「~たち」「~ども」「~ら」がありますが、複数を構成するその個々を表現しているのは「~たち」だけであり、「~ども」は全体を表現し、「~ら」は単に、そうした情況、というだけの表現になっている。その結果、全体を構成する個々への尊重感は「~たち」→「~ども」→「~ら」の順で低くなり、歴史的には、その複数表現に、「武士たち」「百姓・町人ども」「犬ら」、といった表現の違いが生じたりもする。
また「たち」が一般的意味のそれ、という意味でももちいられ、「~たち」が、「~」たる人一般、~のようなそれ、のような意味になる。たとえば「そこ(あなた)たち」が、人が複数いるわけではなく、あなたのような人、のような意味になる。そこたちはみなし子なり→あなたのような人はみなし子なのだ。この一般化する「たち」は「たつゐ(立つ居)」でしょう。
「大船に真楫(まかぢ)しじ貫(ぬ)きこの吾(あ)子を韓国(からくに)へ遣(や)る斎(いは)へ神たち(多智)」(万4240)。
「天皇御靈(すめろきのみたま)たちの(多知乃)恵賜(めぐびたま)ひ(比)撫賜(なでたま)ふ(夫)事依(ことにより)て(氐)顕(あらは)示(しめし)給(たま)ふ(夫)…」(『続日本紀』宣命)。
「汝達(なんだち:なんぢたち)がいふごとく、わが船南へ漂流せしに疑ひなし」(『椿説弓張月』)。
「『をかしかりつる(心惹かれる)人のさまかな。女御の御おとうとたちにこそはあらめ…』」(『源氏物語』:「おとうと」は同性の年下の子。ここでは妹。この「たち」は「おとうと」一般を意味する。複数の「おとうと」を意味しているわけではない)。
◎「だち(達)」
「たちゐ(立ち居)」。「たち(立ち)」はその項。「~たちゐ(立ち居)→~だち」は、「~」が発生している存在、ということであり、「~」であることが強調される存在であることが表現される。
「ちひさいひごひはこどもだち」(『鯉のぼり』「文部省唱歌」)。
「彼は僕のともだち」。