◎「たち(太刀)」
「とやつひ(利矢終)」。効果的矢の終局・究極。原初的な印象は、それは刺すものであり、切るものではないでしょう。
「…皇子(みこ)ながら 任(ま)けたまへば 大御身(おほみみ)に 大刀(たち)取り帯(は)かし 大御手(おほみて)に 弓取り持たし 御軍士(みいくさ)を 率(あども)ひたまひ…」(万199)。
「刀 ………大刀和名太知 小刀加太奈」(『和名類聚鈔』)。
◎「たち(館)」
「とあつゐ(利厚居)」。「と(利)」は意味本質として強さを意味する→「と(利・鋭)」の項。「とあつゐ(利厚居)→たち」は、強く厚い居(ゐ)、強い外的環境影響から厚く守られた居(ゐ)・存在になるもの、の意であり、堅牢に、それゆえに威厳があったりもする、建造物を意味する。これが公的施設になり古代の外交使節の宿泊に利用されたりもし、地方在住官人の居住や事務の邸宅施設であったりし、軍事施設にもなる。漢字では通常「館(クヮン)」と書く。
「高麗(こま)の使者を相樂(さがらか)の館(たち)に饗(あへ)たまふ」(『日本書紀』欽明天皇:「こま(高麗)」は高句麗(コウクリ)。10世紀に朝鮮半島に成立する「高麗(コウライ)」ではない→「こま(高麗)」の項)。
「(入道は)高潮におぢて、このころ、女(むすめ)などは岡辺の宿に移して住ませければ、(源氏は)この浜の館(たち)に心やすくおはします」(『源氏物語』)。
「風忽ちに異賊の方へ吹きおほひ、貞任が館(たち)厨河(くりやがは)の城(じやう)焼けぬ」(『平家物語』)。