◎「たたみ(畳)」
「たちやみ(立ち止み)」。立つことが止んでしまうもの、人が立たなくなってしまうもの、の意。そこに座ったり、ある場合には寝転んだりし、快適さにより人が立たなくなるということです。これはそこに座したりする敷物を意味する。古くは「たたみ」は毛皮その他のものも言った。薦(こも:その葉)を編んだものなどもある。方言には「たざみ」もある。のちには、一般に、藁(わら)で床を作り、藺草(ゐぐさ)などを編んだ表を張り、板の間に置く、さらに後には部屋全体に敷き詰める、ものを「たたみ(畳)」と呼ぶようになる。その後世の畳は、平安時代のある程度初期ころには、後世のものと比較すれば相当に厚い。それを板の間に一枚敷き、そこで、まるでそれが後世で言えばベッドであるかのように、寝、また、そこに座す。しかしそれは、当初は、非常に権威ある人のものであり、一般的というわけではない(ただし、一般にも、後世で言えば畳のような、茣蓙(ござ)のようなものは作られたかも知れない)。それよりも遥かに薄手のものが部屋全体に敷かれるようになったのは室町時代でしょう。
「美智(みち)の皮(かは)の疊(たたみ)八重(やへ)を敷(し)き、亦(また)絁疊(きぬだたみ)八重(やへ)を其(そ)の上(うへ)に敷(し)き、其(そ)の上(うへ)に坐(ま)せて」(『古事記』:「みち(美智)」は海獣のアシカ。「海驢 此云美知」(『日本書紀』)。「みち」は、その平たい前肢て何かを叩く擬音か。海獣アシカは中国語で「海獅」や「海驢」などと言う。日本語では「葦鹿」と書いたりする)。
「韓国(からくに)の 虎といふ神を 生け捕りに 八頭(やつ)取り持ち来 その皮を 畳(たたみ:多多彌)に刺し」(万3885)。
「『この障子口に、 まろは寝たらむ。風吹きとほせ』とて、(小君(こぎみ)が)畳(たたみ)ひろげて臥(ふ)す」(『源氏物語』)。
「簾(すだれ)を掲(あげ)て寝殿(しんでん)に高麗縁(かうらいべり)のたゝみ一帖(でふ)敷(しき)て兵衛佐(ひやうゑのすけ)被座(ざせ)られたり」(『源平盛衰記』)。
◎「たたみ(畳み)」(動詞)
「たたみ(畳)」の動詞化。何かを「たたみ(畳):敷物」の状態にすること。折り重ね平面状にする。ものの存在をまとめ片づけるような意味でも言い、意味発展的に、ことをその存在をまとめ片づけるような意味でも言う→「店をたたむ」。動態を幾重も重ねることも言う→「たたみかける」。
「『……唯(ただ)衣服(みけし)をのみ畳(たた)みて棺(ひつぎ)の上(うへ)に置く(お)けり』とまうす」(『日本書紀』)。
「Tatami(タタミ),u(ム), ǒda(ンダ). Dobrar(折る、曲げる、たたむ). ¶Xiuauo tatamu(シワヲ タタム)). Ter rugas no rosto(顔に皺がある). ¶Iye,I,Xirouo tatamut(イエ、またはシロヲ タタム). Desfazer casa,ou forta leza pera se mudar a outra p r e,&c(家や要塞を解体して別の場所に移動する)」(『日葡辞書』)。
◎「だだびろし(だだ広し)」(形ク)
「だだ」は「ヂあだ(地徒)」。「ヂ」は「地」の呉音であるが、「地」が、「チ」ではなく、「ヂ」と言われた場合、地球表面部たるそれが、単なる物的なそれではなく、人とのかかわりのあるそれとして表現されることが多い→「地元(ヂモト)」「地物(ヂもの):その土地の物」その他。「ただびろし」は「ヂあだひろし(地徒広し)」であり、地(ち)が無駄に、期待はなにも満たされず、広(ひろ)い、ということ。「だだっぴろい」は「だだとひろい(だだと広い)」。