◎「そろばん(算盤)」

「総量盤(ソウリャウバン)」。「盤(バン)」という語は、中国語の元来の意味は日本で言う皿(さら)や(食器を運んだりする)盆(ぼん)のようなものですが、日本ではなんらかの情報が示される平面状のものをいう→「碁盤(ゴバン)」「羅針盤(ラシンバン)」「(時計の)文字盤(モジバン)」。「総量盤(ソウリャウバン)→そろばん」は、総量が示される平面状のもの、ということですが、枠(わく)の中に多数の細い桁(けた)棒があり、この細棒を貫き珠が置かれ、この珠を移動させ対象物数の加減など記録し知る。これにより倉に大量に出入りする米俵などの現在数を知り、記録したのでしょう。漢字表記は「算盤、珠盤、十露盤、天露盤、三羅盤」など、歴史的には様々な表記がある。

「Soroban. …………」(『日葡辞書』)。

「いやいや、今の世は、武勇も首勘状も氏も系圖もいらず、三羅盤(そろばん)を得たるか、田畠のつもり(田畠の生産見積もり)を知りたるか、米のうりやう金銀のまはしをだに心得たらば、めしかかへられんと…」(「仮名草子」『浮世物語』:「首勘状(首感状)」は、敵の首をとった際の戦功書状)。

 

◎「そろひ(揃ひ)」(動詞)

「そろへ(揃へ)」の自動表現。揃えた状態になっていること。「そろへ(揃へ)」はその項。

「かせふけはしとろになひくたよたけのそろはぬふしによをかさねつつ(風吹けば しどろになびく なよ竹の そろはぬ節に 世(節)を重ねつつ)」(『現存六帖』:この「そろはぬ」は、ひとつひとつが同じではない、ということ)。

 

◎「そろへ(揃へ)」(揃へ)

「そりおひえ(外り逐ひ得)」。「そり(外り)」はその項参照(8月31日)。期待に外(そ)れたもの・事象(状態)、をなくした(追放した)状態を得ること。数種の単位が無数にあり全体をある種のものだけにしたい場合、期待にそれた他種を除き、ある種だけにする。形体的に、多数の単位を、期待にあう同じ形体にしたり、全体を期待にあう形体にするために、合わない単位を除いたりもする(たとえば、ひとつひとつをすべて異なった形体にしたい場合、他と同じ単位を除く)。また、意味発展として、社会的に、あることをなすために必要なものをすべて得ることも言う。

この語、原意印象として、玄米などの穀物種を箕(み)にかけ煽り、異物をとばし全体を玄米種一種にする行為を表現する印象が強い。

「鐵の箕(み)を以て三熱猛焔の鐵の炭を盛(もら)れ滿てて。之(これ)を簸(ふる)ひ揃(そろ)へ…」(『法華経玄賛』:「みて(満て)」は「みち(満ち)」の他動表現)。

「揃 ソロフ又ソソル 米以箕(み)―也   簸 ソソル」(『色葉字類鈔』:「簸(ハ)」は箕(み)で米などをふるい異物を除くこと)。

「三年(みとせ)積(ふ)る間(あひだ)に、舟檝(ふね)を脩(そろ)へ、兵食(かて)を蓄(そな)へて」(『日本書紀』:これは必要なものを準備した)。

「必要な道具をそろへる」。