◎「そは(岨)」

「そはひ(背、這ひ)」。「ひ」の脱落。「そ(背)」は後ろであるとともに、前との対応関係で、逆行も表現し、「そはひ(背、這ひ)」は、情況的に逆行が感じられること、上下が逆になるような不安定さがあることを表現する。(山などの)急斜面を意味する。

「この声を聞きて、叶はじとや思ひけん。そはをかい廻りて上りけるを」(『義経記』)。

「閣道は山のそはなどを路に作りたる処なり」(『蒙求聴塵』)。

「山がけはしきほどに、林木もそばさまに生える也」 (『杜詩抄』:木が斜めに生えている)。

 

◎「そば(角)」

「そり(隆り)」(その項参照)の「そ」による「そは(そ端)」。この「そ」は先鋭的に現れ立つことを表現する。その「は(端)」とは、尖(とが)り出た角ばったもの、部分、です。衣の折り目なども言う(尖り立つ印象だから)。

「石のそばの折敷(をしき)の広さにてさし出(い)でたるかたそばに尻をかけて」(『宇治拾遺物語』:崖(がけ)に落ちた者が木にひっかかり途中で止まり、岩の突き出た部分に腰掛けるように座った)。この語が形容詞化した表現では「優婆塞(うばそく)がおこなふ山の椎がもとあなそばそばし床にしあらねば」(『宇津保物語』:椎の木のもとが角張りごつごつしている)。

「耳をそばだて」(耳を尖り立てるようにし。ただし、異なった意味の「そばだて」もある(その項))。