「そのの(其の野)」。「の」の一音脱落。たとえば「梅其の野(うめそのの→うめその)」(人工的に梅を植えそれに占有させたような野、その域)といった表現から、人工的に何か(とくに植物)を植える(生活させる)野の域を表現する言葉として「その」が独立し名詞化した。植物が生活する地を言うことが多いですが、動物のそれも言う。それは「はた(畑)」のようなある植物を育成するための専域性はなく、その専域性は主に食用、すなわち生存や生活のためにそうなるわけであり、「その(園・苑)」にはそうした必要の切迫性はなく、そこには観賞用の植物が植えられたりする(たとえば「Aのその(園)」と言った場合、Aの生活はその園(その)に限定されますがその内部では自由が保障される)。
「園圃 …………所以城養禽獣也………和名曾乃一云曾乃布」「苑囿 ………和名同上」(『和名類聚鈔』:「城(ジャウ)」は、周囲が壁でかこまれ、その内部で人々が暮らす地域。日本語の「しろ(城)」ではない)。「園」にかんしては『說文』に「所以樹果也」。「苑」にかんしては『說文』に「所以養禽獸也」。
「梅の花今咲けるごと散り過ぎず我が家(へ)の園(その:曽能)にありこせぬかも」(万816:「ありこせ」の「こせ」は希求が果たされることを表現する→「こせ(動・助動)」の項・2022年3月3日)。
「鳥獣之囿(ソノ)モ…」(『(猿投神社蔵)文選』正安四(1302)年点:「文囿(フムノソノ)」という語もある)。