◎「そ(衣)」
「しおひ(為覆ひ)」。語頭の「し(為)」は意思的・故意的であることを表現する。身を覆(おほ)ふもの、の意。これは衣服を意味する相当に古い表現でしょう。後には衣服を意味する尊称・雅語のような状態にもなる。20世紀にもなれば、「そで(袖)」という言葉ぐらいにしか残っていない。
「太子(ひつぎのみこ)布袍(あさのみそ)服(き)たまひて」(『日本書紀』)。
「かむみそ(神衣)」(『日本書紀』)。
「御服 ミソ」(『類聚名義抄』)。
「衣 イ コロモ 又ソ」(『色葉字類抄』:原文は「又ソ」にも「ヌノ」にも見えるような書き方ですが、「又ソ」でしょう)。
◎「そ(麻)」
「しひを(廃ひ緒)」。「しひ(廃ひ)」はその項参照(2022年12月12日)。「を(緒)」は線状の長いものを意味する。ここで「しひ(廃ひ)」とは、痩せた、細い、という意味です。「しひを(廃ひ緒)→そ」は、細く長いもの、の意。繊維。「まそ(真そ)」(これは麻(あさ)の繊維でしょう)。「やまそ(山そ)」(これはカラムシ(苧麻(チョマ))の繊維でしょう。コウゾの繊維も言う)。「かうぞ(かみそ(紙そ):楮・榖)」。
「三輪山の山辺まそ(眞蘇)木綿(ゆふ)短(みじか)木綿(ゆふ)…」(万157)。