◎「ずぼん」

「ずんボン(ずん「凡」)」。「ん」の脱落。「ずん」は、「ずん胴(鍋)」にもあるような、真っすぐな状態を表現する(→「ずんぎり」の項参照)。「ずん「凡」」」は、横へ払わずに真っすぐにのばした「凡」の字のようなもの、の意。その形が衣料たる「ずぼん」の全体的な形に似ていることによる表現。(下半身に履く)衣料の一種の名。足を覆う部分が片足づつ筒状になっている。

「ズボンツリ」(『西洋衣食住』(慶応3(1867)年)::ズボンの前後をはさむ紐状のものを肩部にかけズボンが下がらぬようにする衣料具(後に言う、サスペンダー)の名としてこう書かれている。後にズボンと言われる衣料の絵には「股引」と書かれている。この字の読みは通常は「ももひき」)。

「「チヨツキ」「マンテル」沓(くつ)「ズボン」半天(はんてん)腹掛(はらがけ)股引(ももひき)の…」(『西洋道中膝栗毛』(明治3(1870)年):「ズボン」が外国語のような扱いになっている)。

「袴(ヅボン)」」(『男女西洋服裁縫独案内』(明治20(1887)年):「袴」に「ヅボン」という読み仮名がふられる。「ずぼん」の漢字表記は、洋袴・細袴・股袴・下袴・袴服・穿袴、といった書き方がなされた)。

 

◎「ずぼら」

「ずびよりハ(「~ず」日和派)」。「~びより(~日和)」は~に適した状態の日(「ドライヴ日和」)。「ハ(派)」は流儀や主義・主張、思想などを同じくする人たち全体。

「~ず」は否定の「ず」であり、なにかをしない、ということ。ほぼ毎日がなにもしないことに好都合な「ずびより:「~ず」日和」である人たち全体が「ずびよりハ(「~ず」日和派)→ずぼら」。これは江戸時代もそうとう後期に戯作の世界から生まれた語でしょう。

「又絵を描いた作者芳梅と云ふ人も大のづぼらの極道でござりますが」(「咄本」『諺臍の宿替』)。