◎「ずべこう」

「不可好」。「不可(フカ)」は、可(べし)に不(あらず)、ということであり、よくない、という意味ですが、これを「不(~ず)」「可(~べき)」と読み「ずべき好(カウ)→ずべこう」。よくない、を好む者、の意。その場合、「好」は文字を分解し「女子」でもあり、意味は「よくない、を好む女子」でもある。「女子」という語は、一般に、十代を中心にした若い女を言い、ある程度年齢のいった女は言わない。つまり、意味は、「よくない」を好む十代を中心にした若い女。いわゆる、不良少女。「よくない」を好む者は、男女を問わず、年齢を問わず、いるわけですが、そういう若い十代で街をさまよう男はありきたりにいるが、女は印象的だったということでしょう。この語は第二次世界大戦後直後ころから広まりましたが、その後、ほとんど言われなくなっている。

この語の語源は、だらしなさを表現する「ずべら」に「公(コウ)」がついていると言われますが、「ずべら」は「ずべらぼう」「ずんべらぼう(バウ・坊)」に由来し、「べらばう」は江戸時代に見世物になっていた畸人に由来し、意味がことなる。

 

◎「すべて(全て)」

「すべて(統べて)」。「すべ(統べ)」はその項(5月7日)。「て」は助詞。全域を把握し全体を一つにまとめる経過にあることを表現する。否定表現をともなう場合、否定が強調される。

「花も絲も紙もすべて、なにもなにも、むらさきなるものはめでたくこそあれ」(『枕草子』)。

「その夜、もしや、と思ひて待てど、また来ず。またの日も文もおこせず。すべて音もせで五・六日になりぬ」(『大和物語』:まったく本人も来なければ文(ふみ)もない)。