◎「すべ(窄べ)」(動詞)
「すひゆうめ(吸ひゆ埋め)」。「ゆ」は(経験経過を表現する)助詞。「うめ(埋め)」は存在の生態的な動態感があることを表現する。他動表現も、(客観的な対象を主体とする)自動表現もある。「宝を土にうめ」(他動表現)。「客は会場をうめ」 (自動表現:客は会場の状態で存在化した)→「うめ(埋め)」の項(2020年7月16日)。「すひゆうめ(吸ひゆ埋め)→すべ」は、吸ひという経過で(吸ひで)、何かが埋(う)まった、空域がなくなった、満ちた、状態になること。全体が一点へ吸われ収縮・集積した状態になることです。これはなにかを吸う口の動態が基本でしょう。「すべ」はその際の口唇(くちびる)の状態。この動詞「すべ(窄べ)」はそれ自体の自縮を言いますが、同音の「すべ(統べ)」は客観的対象にかんし言う(たとえば「すべ(窄べ)」の場合「尾をすべ」や「肩をすべ」は自体がそうなっており、「家来を窄(す)べ」といった表現はない。「すべ(統べ)」の場合、「家来を統(す)べ」はある)。「すべ(統べ)」も参照。
「口をつぼめ肩をすべたるけしき也。身のさむき体なり」(『類字源語抄』)。
「今まで猛きかたちにて、取り食はんとせしに、虎にはかに尾をすべて逃げ退きければ」(「御伽草子」『二十四孝』)。
◎「すべ(統べ)」(動詞)
「すひゆうめ(吸ひゆ埋め)」。「ゆ」は(経験経過を表現する)助詞。「すべ(窄べ)」(その項)と同じです。「すべ(窄べ)」との違いは、「すべ(窄べ)」が自らが自らを収縮・集積させるのに対し(「怪物が尾をすべ」)、「すべ(統べ)」は他者・事象を収縮・集積させる。他者・事象全体を吸いとり全域に自己を存在化させ全体を一つにまとめるような動態をする。
「綢繆機衡(よろづのまつりごと)を綢繆(すべをさめ)たまひて、神祇(あまつかみくにつかみ)を禮祭(ゐやま)ひたまふ」(『日本書紀』)。
「老僧観規は……有智(ウチ)の得業(トクゴフ)にして、並びに衆才を統(すべ)たり」(『日本霊異記』:「得業(トクゴフ)」は、一般的には、仏道修行を修めた人を言いますが、僧の学問上の階級の一つでもある。「衆才(シュウサイ)」は才能ある多くの人々)。
「SUBE,―RU スベル 統 t.v. To unite in one(ひとつにまとめる), taking the whole(全体を把握する) : sube(スベ) awasete(アワセテ) iwaba(イワバ), to speak uniting them in a whole(全体をまとめて言えば), to speak generally(一般的に言うと) ; tenga(天下) wo(ヲ) sube-osameru(スベ-オサメル), to govern the whole empire(帝国全域をおさめる). Syn. ITTO SURU(一統する)」(『改正増補 和英英和語林集成』)。