◎「しばらく(暫く)」
「しまらく(暫く)」の変化。→「しまらく(暫く)」の項(下記)。
「(中宮は)しばらくはこなたにおはすれば、明石の御方も渡りたまひて…」(『源氏物語』:この「しばらく」は「しばし」とする本もある。「しばらく」は、平安時代、漢文訓読系の語だったからです)。
「其(そ)の形(かたち)聊(いささ)か異(ことなれ)ども共(とも)に観音の一體也。其(そ)の名(な)暫且(しばら)く替(かはれ)ども并(ならび)に弥陀の分身也」(『諸神本懐集』:その名は完成的な名ではない→「しまら(暫)」の項(下記))。
「暫 ……シバラク カリソメ アカラサマ」(『類聚名義抄』:「アカラサマ」は、時間的にほんの短い間(ほんの少しの間)、そして非常に軽い印象の間(かりそめの間)、の意(後世、「明ら様」―隠されず誰にも見られるような様子、と受け取られ、そのような用い方がなされるようになる))。
「しばらくお待ちください」。
◎「しまらく(暫く)」
「しまらく(思麻良久)は寝つつもあらむを夢(いめ)のみにもとな見えつつ吾(あ)を音(ね)し泣くる」(万3471)。
◎「しまら(暫)」
「しまりは(締まり端)」。意味は「しまし(暫し)」と同じ。「しまらのあひ(暫の間)」とも言う。それは「しまりはのあひ(締まり端の間)」。締まったその端のささいな隙間。その程度の時間、の意。それは、時間的にも、その、時間による意味発展的にも、小さく開放感のない空間であり、すぐに終了することが予想される(つまり、完成的に、ではなく、仮に、のような意味になる)。
「しまらく(暫らく)」という表現もあり、それは「しばらく(暫く)」になる。
「…暫又為蹔字 之麻良」(『新訳華厳経音義私記』)。