◎「しづめ(静め・鎮め)」(動詞)

「しづ(鎮)」「しづ(沈静)」の動詞化。沈静させること。「心をしづめ」。「騒乱をしづめ」。「人をしづめて」が、人々が寝静まるのを待って、の意になったりもする。

「加持の僧ども、声しづめて法華経をよみたる、いみじう尊し」(『源氏物語』:これは「しづ(沈静)」の動詞化。音響刺激を弱めてよんだ)。

「御位を去らせたまふといふばかりにこそあれ、世のまつりごとをしづめさせたまへることも、我が御世の同じことにておはしまい(し)つるを…」(『源氏物語』:これは「しづ(鎮)」の動詞化。安定させること)。

 

◎「しづまり(鎮まり・静まり)」(動詞)

「しづめ(鎮め)」「しづめ(静め)」の自動表現(下記※1)。「しづめ(鎮め)」「しづめ(静め)」た状態になること。そうなるのは、人の思いや感情、気象状況、社会状況など、さまざまです。「(人々が)ねしづまる(寝静まる)」という表現もある。

「是(ここ)に、疫病(えのやまひ)始(はじ)めて息(や)みて、國內(くにのうち)漸(やうやく)謐(しづまりぬ)」(『日本書紀』)。

「心のしづまる世なく…」(『浜中納言物語』)。

「…あさもよし(下記※2) 城上(きのへ)の宮を 常宮(とこみや)と 高くし奉(まつ)りて 神ながら しづまり(安定)ましぬ…」(万199:これは挽歌)。

「兵革(ひやうがく)靖(しづ)まらば大神宮へ行幸成るべき由仰下さる」(『平家物語』:これは「しづめ(鎮め)」の自動表現)。

 

※1 同じような変化としては「ため(溜め):他動」「たまり(溜り):自動」、「しめ(締め):他動」「しまり(締り):自動」その他があります。ここでアクセントに関し一言すれば、「ため(溜め)」は「た」(語頭)にアクセントが入りませんが、そういう場合「たまり(溜り)」は「ま」にアクセントが入らない。「しめ(締め)」は「し」(語頭)にアクセントが入りますが、そういう場合「しまり(締り)」の「ま」にアクセントが入る。

 

※2 「あさもよし(枕詞)」(再記)

「あさみをよし(浅見を良し)」。浅く見て(よく見ずいいかげんに見て)良しとすること。それは後悔する→深く見なければ本当の良さや意味は分からない、の意。これが「くい(悔い)」→「き(紀・城)」にかかる。「き(紀)」は国名。「き(城)」は外敵に備えた砦のようなところや墓処。