◎「しづみ(沈み)」(動詞)

「しひつつふみ(廃ひつつ踏み)」。「しひ(廃ひ)」は機能が不全化すること(その項)。「つつ」は同動・連動を表現する(その項)。「ふみ(踏み)」は実践すること、経験経過すること(その項)。すなわち、「しひつつふみ(廃ひつつ踏み)→しづみ」は「しひ(廃ひ)」の、機能不全の、連動経過を実践することであり、物的、社会的な環境影響により機能が不全になる(十分な機能がはたせなくなる)ことが持続連動する経験状態になる。物的環境影響とは、たとえば「水にしづむ」の場合、水という環境に入り機能不全になる。その場合、水中で自由落下することも「水にしづむ」ですが、落下せず、水中で静止していてもそれは水に沈んでいる。社会的な環境影響とは、たとえば社会的に零落する。「元の品高く生(む)まれながら、身は沈み、位みじかくて(低く) 人げなき(一人前の人と評価されない)」(『源氏物語』:この「しづみ」は、不遇で、おちぶれ、のような意)。思いが機能不全になり活性がなくなったり減少したりすれば「思ひにしづむ」。「古(ふ)りにし嫗(おみな)にしてやかくばかり恋に沈まむ手童(てわらは)のごと」(万129)。太陽が西の地平線下へ見えなくなっていけば「日がしづむ」。

「難波潟(なにはがた)潮干(しほひ)なありそね沈みにし妹が光儀(すがた)を見まく苦しも」(万229:海に身をなげた女性がいた)。

 

◎「しづめ(沈め)」(動詞)

「しづみ(沈み)」の他動表現。沈んだ状態にすること。「池に石をしづめ」。「苦海に身をしづめ」。