一般に「お(御)」が付され「おしっこ」と言う。尿排泄や排泄した尿を意味する「しし」という表現がありますが、これは尿排泄の際を表現する擬音。連音は動態の持続を表現する。「しこ」や「しっこ」はそれによる「ししこ」。語尾の「こ」は「跨:(「コ」。またぐこと)」の音(オン)であり、そのような印象の動作をするから(「うんこ(糞)」の項・2020年8月10日参照)。
「負ひたる孫はい振られて、何心なく笑ふ。ししにやよだれにや、鬼うばが背中より裾下りにしかけ…」(『福富草子』「御伽草子」・絵巻物もある:この『福富草子』は放屁芸なるもので富を得ようとした老婆・老人の話。詳しい成立年代は不明ですが、南北朝時代ころ、1300年代中ごろから後半ごろ、かと言われている。内容は下利便をまき散らすようなひどい話ですが、鎌倉から室町時代にかけ交換経済が発展していく中で、欲に駆られた人間が熱情的に呆けていく、さらには、鬼になっていく、様を滑稽に(そしてふと恐ろしく)描いたということか。「鬼の人喰ふこと、あな恐しとて、逃げ侍るもあり」。これはこの物語の末尾にある、前記「鬼姥」を表現した一文)。
「抱姥(だきうば)は若子(わこ)さまに事よせて近寄、お子を清十郎にいだかせ、膝に小便(しし)かけさせ」(「浮世草子」)。
「男の子が、『母さん、しっこ』と云ひ出した」(『網走まで』志賀直哉)。