◎「しづく(雫)」

「しづきゆ(鎮き揺)」。「しづき(鎮き)」はその項(水底(海底)につくこと・下記)。「ゆ(揺)」は弛緩・動揺を表現する→「ゆり(揺り)」の項。「しづきゆ(鎮き揺)→しづく」とは、自由落下し動揺する・揺れる、もの、といった意味であるが、たとえば、水分が斜めになった葉の表面を伝わり落下していき、水底についたようにその端でとどまり、水分が増え、葉から離れ落下しそうになり動揺している水滴、それが「しづく」。葉から離れ落下していくそれも「しづく」という。

「吾(あ)を待つと君が濡れけむあしひきの山のしづく(四附)にならましものを」(万108)。

 

◎「しづき(沈き)」(動詞)

「しづ(鎮)」(10月30日)の動詞化。水底(海底)につくこと。

「藤波の影なす海の底清み沈着く(しづく:之都久)石をも珠とぞわが見る」(万4199)。

『古今集』には「水の面(おも)にしづく(花の色にある人の面影がおもわれる)」という表現があるが、これは喪の際の歌であり、この表現により水面に映る影に深みが表現されたのでしょう。