「しつし(為つ為)」。「つ」は同動を表現する助動詞(「つ(助動)」の項)。「し(為)」で表現される動態の連続を表現する。つまり「しつし(為つ為)→しじ」は、連続する動態、多数の動態、が表現される。動態が多いということはその動態を現す何かが多いということです。
「大船(おほふね)に真楫(まかぢ)しじ(繁)貫(ぬ)き」(万368)。
「しじに(繁に)」という表現が多い。
「三諸(みもろ)の神名備(かむなび)山に五百枝(いほえ)さし繁(しじ)に生ひたるつがの木の…」(万324)。
「山はしもしじ(之自)にあれども…」(万4000:「山はし」の「は」は助詞であり、「し」はなにかを指し示す「し(其)」。山はそれも、のような、山を確認強調する表現)。
「…我が独(ひと)り子の 草枕 旅にし行けば 竹珠(たかだま)を 密(しじ)に貫(ぬ)き垂(た)れ 斎瓮(いはひべ)に 木綿(ゆふ)取り垂(し)でて 斎(いは)ひつつ 我が思ふ吾子(あご) ま幸(さき)くありこそ」(万1790:一人息子が遣唐使となり、船出する際の母の歌)。