「しいしひ(為射強ひ)」。語頭の「し」は動態が意思的・故意的であることを表現する。「しいしひ(為射強ひ)→しし」は、「しい(為射)」が強ひられているもの、射ること(射られること)が運命必然であるもの、の意。つまり、(狩りにおける)獲物(えもの)、ということです。この場合、射るのは、原意としては、弓矢ではなく、石でしょう。これはそんな時代の言葉でしょう。現実において、「獲物」は主に猪や鹿でしょうけれど、その肉も「しし(宍)」と言う。
「ニク」は「肉」の音(オン)。
「シシまひ(獅子舞)」などの「シシ」という語もありますが、これは漢語(ライオンを意味する。中国の書には「獅子(シシ)」の説明として「似虎,正黃有髥耏,尾端茸毛大如斗」とある)。
「猪(しし:志斯)の病猪(やみしし:夜美斯志)の吼(うた)きかしこみ…」(『古事記』歌謡98)。
「…朝狩に 鹿猪(しし)ふみ起し…」(万478)。
「(鹿の)わが皮はみ箱の皮に わが肉(しし:宍)はみ膾(なます)はやし(膾としてもてはやされ) わが胆(きも)も…」(万3885)。
「肉 …肉 如陸反…和名之々 肌膚之肉也…」(『和名類聚鈔』)。