◎「しこり(凝り)」(動詞)
「しこり(為凝り」。動態的に(すなわち現実的に)凝集・凝結した、固まったような状態になること。 (物体現象や生理現象も含め)事象がその進行につれ、もうそれ以上進行しないような、凝固感を感じる状態になることや、ある動態が物的・心的に凝固感を残すこと、残したそれ、も「しこり」と言う。つまり、物が凝固していく状態になったり、人などが情動的な影響によりそうなったりし、後者の場合、たいていはそれは激昂し昂奮している(「…シシガ シコッテ イル 猪が腹をたてたりして身動きもせずじっとしている」(『日葡辞書(訳)』)。多くの人が一塊になるように集まることなども言い、動態がそればかりになることも言う(→「(酒を)飲みしこる」)。
「…下知し給ふやうは、『……面(おもて)もふらで責のぼれ。壁ぎはにもなるならば、楯をばすてゝしこるべし』」(『なかおおちのさうし(中尾落草子)』)。
「まけ(負け)をおしみ(惜しみ)て打ちしこれば、かならず大まけ(負け)をするものなり」(『世間母親容気』:これは「趣味に凝(こ)り」や「凝(こ)り性(シャウ)」などの「こり」) 。
「ſonotoqi cano xujin ua faranitate xicotte Eſopo uo mexiyoxe iuaruruua(その時かの主人は腹に立て凝(しこ)ってエソポを召し寄せ言わるるは)…」(『天草版伊曽保物語』:これは腹をたてている)。
「痤 シコリ 説文 小腫也」(『書言字考節用集』)。
「(人間関係に)しこりを残す」。
◎「しこり」
「しこり(為懲り)」。「し(為)」は意思的であることを表現する(「し(為)」の項・8月24日)。意思的な「こり(懲り)」とは、後悔。この「しこり」は、し損(そこ)ない、間違い、のような意で解されることが多いようです。
「吾が背子が来むと語りし夜は過ぎぬしゑやさらさらしこり(思許理)来(こ)めやも」(万2870:「しゑや」に関しては「よしゑやし」の項。はいはい、あなたを信じたことを凝りてなんかいませんよ。なんの痛痒も感じていません、というような歌)。