「しこめ」は「しけおめ(無機能け臆め)」。「しけ(無機能け)」は機能的に無力化していったり、それが社会的無力であれば無価値化・粗末化していくこと。これに関しては「ひしけ」の項(→「しけ(時化け・不景気け)」の項・9月24日)。「おめ(臆め)」も、衰弱したような不活性な動態が生じること→「おめ(臆め)」の項(→「おみ(臣)」・「おめ(臆め)」の語源・2020年12月10日:この「お」は「おい(老い)」にある「お」です)。つまり「しけおめ(無機能け臆め)→しこめ」は、機能的に無力化し、存在が無意味化・粗末化していくこと。この語は『古事記』において「黄泉国(よみのくに)」から帰った「いざなぎのみこと」が彼(か)の国を「しこめ しこめき きたなき国(くに)」と表現しているそれですが、この「しこめき」は「しこめきき(しこめ効き)」。つまり、「黄泉国(よみのくに)」を表現した「しこめ しこめき きたなき国(くに)」は、機能的に無力化し、存在が無意味化・粗末化していきますます機能的に無力化し、存在が無意味化・粗末化していき汚(きたな)い国(くに)、ということ。

「吾者 到於 伊那志許米 志許米岐(此九字以音) 穢国而 在祁理(あは いなしこめ しこめき きたなきくにに いたりてありけり)」(『古事記』の原文)。「吾前到於不須也凶目汚穢之處(われさきに いなしこめききたなきところに いたる)」(『日本書紀』の原文:これらは一般になされている読みですが、「不須也」が「いな」と、「凶目」が「しこめき」と読まれている『日本書紀』のこの読みは『古事記』にある伝承に影響されているものでしょう)。

 

「しこめ(醜女)」という語に関しては「しこ(醜)」(9月28日)の項。この語は、後世では、通俗的に、容姿に着目して女を表現しますが、元来はそういう意味ではありません。