希求を表現する「~しか」です。「しいか(為如何)」。「し(為)」は動詞。
「いか(如何)」は思考や心情の進行とその気づき確認が表現される(→「いか(如何)」の項・2019年10月15日。これは進行している・持続している思考・疑門発動の結果動態にあることを表現する。「いかに(如何に)」などの「いか(如何)」)。ここでは推想・空想的思考や心情の進行とその結果動態にありその永嘆的確認が起こっている。
「し(為)」は動詞ですが、その「し(為)」の前で表現される動詞は連用形名詞化。「~し(為)」で、~をし、と、その前で表現されている動態をしている情況が夢想・空想される。それをしたら(自分は)どうなるだろう、と夢想され、それがそれを希求していること表現するのが「しいか(為如何)→しか」。「見しかと思ふ妹(いも)」(万2366:見しか→見し如何(いか)…。見たら…という空想表現が「見たい」という希求表現になる)。「しが」と濁音化も起こる。これは「し」と「か」の間にある「い」の影響。
また、動詞とそれに続くこの「しか」「しが」の間に助動詞連用形の「て」(「つ」の連用形)「に」(「ぬ」の連用形)が入ることが多い(つまり、動詞にそういう助動詞がつく。完了の「つ」や「ぬ」により希求の強さが表現されるわけです)。さらに、末尾に永嘆的な「も」や「な」が加わることもある(それにより思いが深く表現される)。それらの結果、この「しか」により、「~てしか」「~てしが」「~てしがな」「~てしがも」「~しが」「~しがな」「~にしか」「~にしが」「~にしがな」等のさまざまな類型の表現が現れる。「~し」により表現される動態は「見(み)」「成(な)り」「得(え)」が多い。見たり成ったり得たりは希求・願望を表現しているということです。
「あさなさな(朝には朝には:毎朝)あがる雲雀(ひばり)になりてしか(弖之可)…」(万4433)。
「いかにこのかぐや姫を得てしがな見てしがなと…」(『竹取物語』)。
「なかなかに人とあらずは酒壷(さかつぼ)に成りにてしかも酒(さけ)に染(し)みなむ」(万343:そうなることでいい加減に人であることがなくなるならいっそ酒壷になりたい)。
「伊勢の海に遊ぶ海人ともなりにしが…」(『後撰和歌集』)。